「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!

第17話 城ヶ崎君視点「先輩、今日も可愛いですね♡」7

「野坂先輩、お疲れ様です♡先輩とお弁当交換だなんて最高です」
「お疲れ様、城ヶ崎君。うん、私も学生時代に戻ったみたいに楽しいよ」

 大好きな野坂先輩の作ってくれた手作り弁当、くうぅーっ! すっげえ嬉しい! テンションあっがるう。

 先輩が僕のために……僕のためだけに作ってくれたんですよね、ああ、手作り愛情たっぷり弁当……、嬉しすぎる。

「お友達とお弁当交換とかしたんですか?」
「うん、おかずを取り替えっこしたりね。大学の時は先輩が毎日違う卵焼きを焼いてくれて……」
「……大学の先輩って、女の子ですよね?」
「えっ? ああ……、女の子もいたし男の子もいたかなあ」
「常盤社長も?」
「……いたけど。ああ、でも舜先輩は私だけじゃなくって、皆に卵焼きを焼いてきてくれたりしてたから。それに前にも言ったけどまるで別人なんだよ。まだ本人には舜先輩かどうかちゃんと確認してないし」

 僕ったら思い出話の中の常盤社長に嫉妬してるんだ。
 野坂先輩から常盤社長とあったことを聞いてる。
 僕は常盤社長の言動から、野坂先輩には本気だということを感づいてしまってて。
 あの人は真剣に野坂先輩を手に入れようとしている。
 危機感に苛まれていて、僕はどうしようもなく苦しくて焦ってた。

 先輩に一番近いのは僕だって思ってたのに。

「見ーちゃった、見ーちゃった。茜音ちゃんったらこんな会社のお庭で同僚とチューしてるだなんて大胆だなあ」

 突然の乱入者が僕と野坂先輩のランチタイムに現れた。
 せっかくのラブラブな時間を邪魔してくれちゃって。
 ……ってか、この人誰だ?
 僕が振り返ると、ちょっとチャラそうな一言で言えばイケメンが立っていた。

 先輩を「茜音ちゃん」呼びするとは、なんて奴。親しそうな雰囲気出してきてるけど、野坂先輩はキョトンとした顔……、先輩には心当たりがなさそうだな。

「えっ!? だ、誰?」
「誰です? 覗き見してんの」

 茜音ちゃん呼びしてくるこのイケメン。ちょうど常盤社長ぐらいの年で、高そうな上質なスーツを着ている。たぶん、名の知れたブランドかオーダーメイドなんだろう。隙や無駄のない感じ、しっくりと着こなしていて、背の高いこの人にはぴったりとよく似合っている。
 華やかな雰囲気、賑やかな性格……。
 僕の警戒メーターが上がる。
 まさか、この人も野坂先輩狙いではなかろうか?

 わははと最初笑っていたが、「少しご一緒させてもらうよ」髪をかきあげ僕らの横にさらっと座り込んだ仕草はちょっと優雅だ。
 ……常盤社長とどこか雰囲気が似ている。

「恋人たちの横に座るのは無粋で失礼したかな?」
「そう思うなら、立ち去っていただきたいのですが」

 僕とその人が話している間、野坂先輩はじっと乱入してきたイケメンを観察していた。

「あっ! 分かった! わ、和久井先輩っ!? もしかして和久井タケル先輩ですか?」
「せいか〜い。お久しぶり、茜音ちゃん」

 和久井先輩って呼んだ野坂先輩の親しそうな声音に、僕の胸はずきりと痛む。
 ――この人は野坂先輩のなに?
 なんで先輩はワクイとか言うその人に楽しそうに笑いかけてるの?

「いやあぁ、びっくりだよ。茜音ちゃん、元々可愛かったけどますます可愛く綺麗になったね。……ああ、磨かれたって感じ」
「そそそ、そんなことないです」

 野坂先輩は可愛くて綺麗って、僕だって知ってる。
 でもどうしてか、他の男が先輩をそう褒めるとざわざわと落ち着かなくなるんだ。

「へえ、舜が言っってたとおりだ。しかも茜音ちゃん、睨みを利かしてる番犬連れて」
「番犬って……。同じ部署の後輩の城ヶ崎悠太君です」
「城ヶ崎です。あなたは……?」
「俺? 俺は常盤舜のはとこで和久井タケル。常盤グループのニューヨーク支店で支店長を任されてる」
「えっ――、舜先輩とタケル先輩ってはとこだったんですね。それに同じ会社なの知りませんでした」

 ワクイさんは僕と野坂先輩に名刺を渡す。
 そこには『常盤食品株式会社ニューヨーク支店支店長 和久井タケル』と書かれている。

「ああ、無理もないよ。俺達が親戚ではとこって事は普通の学生生活をエンジョイしたいから隠しておけって舜が言ってたから隠してたし、常盤の会社は子会社も多いからね。社員全部なんて誰も把握できてないっしょ」
「そうだったんですね。で、どうして東京本社にいらしたんですか? お仕事でですか、それとも常盤社長に会いに」
「うーん、どっちもかな。仕事でもあるし、舜の様子も見に来た」

 そつのない、感じがした。
 笑ったり、人懐っこそうに愛想よく。が、どこか鋭い視線を時々向けられてる。これは僕の気のせいじゃない。

 僕の観察をしてるってとこか。
 野坂先輩のそばにいるのに相応しいのかどうか見極めようとしている?

 和久井さんは甘く優しげな瞳で、野坂先輩を見つめる。
 むっか〜っ! ああ、むかつくな。
 常盤社長のはとこってだけあって、血縁を思わせる似た風貌。
 
「さあて、そろそろ社長室に行かなくてはね。ランチタイム、お邪魔したね。茜音ちゃん、近いうちに御飯食べに行こう。舜も誘うから一緒に。ねっ?」
「御飯ですか……?」
「ああ、良いよね? 久しぶりに再会できたんだ。旧き良き友情を温めようではないですか。……今日は茜音ちゃんの顔を見に来たんだよ。元気そうで安心した」
「……? 私は元気ですよ?」
「失恋したばかりだと聞いてね。まあ、そばに愛のあふれてダダ漏れな彼がいるなら安心だ」
「和久井先輩……、心配してくれたんですか」
「まあね。主《おも》には舜がだけどね」
「常盤社長が……」

 その瞬間がすごく寂しかった。
 野坂先輩が常盤社長のことを考えてるのが分かる。

 ああ、常盤社長が野坂先輩の大学のサークルが一緒だった舜先輩ってヤツだったって確定した。
 気が抜けない相手が、……また増えた。
 野坂先輩は自分で気づいていないんだ。自分の魅力に……。
 こんなに惹き寄せられてしまう、僕も、周りの男も。

「……舜が茜音ちゃんに夢中になるのが分かるなあ。茜音ちゃん、可愛いもんなあ。ねっ、俺もさ、君の恋人に立候補しても良い? 俺ちょっと前まで恋人がいてさ、ニューヨークから一緒に来たんだけどその子に振られちまった。一目惚れした男が出来たんだって。だからちょうど恋人と別れたとこなんで……。舜もそこの城ヶ崎君もやめて、俺にしなよ? 茜音ちゃん。俺、大事にするよ君のこと」

 僕の目の前で、和久井さんはぐいぐいと野坂先輩に迫り口説きにかかる。
 無防備な野坂先輩の手を取り、和久井さんは彼女に顔を近づける。

「こ、困ります」
「舜に遠慮してたけど、俺も君のこと好きだったんだよ? 茜音ちゃん。大学時代から」

 やめろ、僕の大好きな先輩に気安く触るな。

 和久井タケル……、また今日僕の恋敵が増えた。
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