「大好き♡先輩、お疲れ様です♡」溺愛💕隣りのわんこ系男子!

第22話 城ヶ崎君視点「先輩、今日も可愛いですね♡」9

 僕は社員旅行の旅先で、野坂先輩がほろ酔いに酔ってしまい足元がおぼつかないのでお姫様抱っこした。う〜ん、役得〜。僕の腕の中に先輩がいるとか、こんなんやばい、嬉しいって。

 このまま先輩を離したくないって思うのに、もう旅館の先輩の泊まる部屋に着いちゃったな。

「……部屋の鍵、今田主任に預けたんだった」

 おっと、僕にはラッキーハプニング?
 ラッキーとか思ってごめんね、先輩。……だって、このまま鍵がなければ僕は先輩ともっと一緒にいられる?

 先輩は部屋に入れず、焦ってる。
 そんな先輩すら可愛いとか思うのは、僕がガチで野坂先輩にベタ惚れだからだ。

 本当は知ってる。
 僕は意地悪だ。
 野坂先輩といたいからって、鍵が開く方法を知らないだなんて嘘をついた。

「僕の部屋に来ませんか?」
「そ、それはだめ」

 先輩は顔を真っ赤にして頭をぶんぶん振った。
 分かってる――、こんな誘いを先輩がのるわけがないこと。

「ふう。やっぱ先輩は誘いに乗ってくれないんですね。……あー、すいません。僕、実はどうしたら部屋を開けられるか知ってました。先輩ともっと一緒にいたくて。意地悪ですね、僕」
「えっ、城ヶ崎君……」
「……先輩、キスしたくなる顔」

 そんな上目遣いの顔、可愛すぎてそそれられちゃってやばいでしょ。
 無防備な野坂先輩の唇に僕は唇を重ねる。
 じっと僕が見つめると、先輩の顔は耳まで真っ赤にますます染まる。

「たぶん廊下の電話で旅館の人に事情を話せば合い鍵を持ってきてくれます。僕が電話しますね」
「知らなかった。私、鍵を失くしたこととかなかったから」

 僕は先輩に頭を下げた。
 大好きな先輩を慌てさせた、顔面蒼白になって可哀想な思いをさせた。
 僕は悪い男だ――。
 一時の誘惑で、先輩を困らせたから。

「ごめんなさい、先輩と一緒にいたいからって。脳内で誘惑する小悪魔に魂を売ってしまいました」
「いいよ、そんなにあやまらなくっても。私、私は……。ねえ、……城ヶ崎君。そんなに私と一緒にいたいって思ってくれてるの?」

 そんな風に言ってくれる優しい先輩の言葉にハッとして、彼女を見ると照れて困ったような顔をして。
 僕がじっと見つめたら視線をそらした。

 ドキドキする。
 また先輩を抱きしめたい。

 でも――、ズキズキする胸、後ろめたい。
 大好きな人をだましたみたいで。

「そ、そりゃあ、大好きな先輩ともっと一緒にいたいですよ? でも……、なんか先輩に悪いことしたんで。僕が電話をするんで旅館の人に鍵を開けてもらいましょう。先輩が部屋にちゃんと入るのを見届けたら、僕も部屋に戻りますね」
「……城ヶ崎君」

 ――えっ?
 先輩の甘ったるく可愛い声が僕にドキドキを重ねてくる。
 加速する、鼓動。

 野坂先輩がもじもじとしてなにか言いたげで。

「城ヶ崎君。……もっと一緒にいたい。帰らないで」
「……ぷはあっ。そ、そんなん先輩に言われたら僕どうしたら良いんですか?」

 か、かわいい、かわいいって!
 ああーもうっ!

「『帰らないで』って。ずるいですよ、かわいすぎ」
「えっ……、だって」

 僕は衝動を抑えられなかった。
 野坂先輩をぎゅうっと抱きしめる。
 もう先輩の良い香りにくらくらとしてきた。
 理性はぶっ飛ぶ寸前!
 本当は強引に先輩を部屋にお持ち帰りして連れ込んで、そのまま……。

 帰らないでってことは離れたくないってことでしょ?
 こんな先輩をそのままの気持ちで部屋に帰して、僕は悶々として先輩は寂しいって思いながら夜を越すんだよね。
 そんなん、耐えられません。

「じゃあ、どうしたいの?」

 僕は臆病で意地悪だ。
 先輩に答えもどうしたら良いのかも委ねてしまう。
 だって仕方ないじゃないか。僕はまだ、先輩の公式の正式のカレシじゃない。恋人同士じゃないんだもん。
 お酒に酔っただけの人恋しさなら僕じゃなくてもいいわけだし、酔った勢いでだなんてあとで後悔するかも知れない。

「耳に城ヶ崎君の囁く吐息がかかって……、どきどきする。くすぐったぁい」
「くすぐったいの? ……先輩のそんな蕩けた顔……僕以外の誰にも見せたくないので。先輩、僕の部屋に来て欲しいんだけど」

 一瞬の間があく。
 返事、しない先輩。
 やっぱり躊躇してしまうよね。

「行く! 行きます! 私、遊びに行くぅ〜、城ヶ崎君の部屋へレッツゴ〜」
「もしかして先輩、だいぶ酔いが回ってます? 大丈夫?」
「だいじょうっぶれっす!」

 足がもつれる先輩を僕はひょいっと横抱きに抱き上げて歩き出す。
 うふっ。とか先輩からご機嫌な笑い声が聴こえる。

「うふふ、城ヶ崎君がまたお姫様抱っこしてくれたあ。お姫さまと〜、王子さまみたい」
「先輩はあんまりお酒を飲んじゃだめですからね。……僕も強いほうじゃないけど心配でちっとも酔えませんね」
「おかしいなあ、こんなに弱かったれすかね、わらし」

 野坂先輩って日本酒がだめなのかな。ビールとかサワーはまあまあ飲めたと思うんだけど。相性なのか酔いが周りやすいお酒とか翌日に残ったりするお酒の種類ってあったりするよね。

 先輩にはなんにしても、僕がいないとこで飲んで欲しくないな〜。
 酔って色気ダダ漏れで、隙だらけではないですか。

「先輩、あんまりお酒は飲むのは禁止です。襲われちゃいますよ?」
「襲う? 誰があ〜? あっ、城ヶ崎君がわたしを襲っちゃうんだあ。いいよ〜」
「よくないですよ」

 完っ全に出来上がってる。
 まあ、良いんです。
 僕のそばにいてくれたら、心配しないですみますから。

 部屋に着くと……、布団が二組並べてぴったりくっついて敷いてある。
(…………)
 ……そりゃ、そうか。元々は同僚と泊まる予定の部屋なんだから。

 先輩と二人だからか、ただの敷かれた布団の刺激が強い。
 心臓が持たん。

 とろんとした瞳の先輩を布団に下ろそうとしたら、しがみつかれた。

「う〜ん、そんなに抱きしめられてしまうとぎりぎりの理性ももうぶっ飛んで、さすがの聖人君子の僕でも先輩を押し倒そうとしてしまうかもしれませんよ?」
「じゃなくってえ、歯磨きしたいの」
「――? 歯磨き?」
「寝る前にはねえ、ハ・ミ・ガ・キしないと。ねっ? 城ヶ崎くぅん」

 僕の横抱きからするりと下りて、さっさと洗面台に行ってしまう先輩。
 先輩を抱いていた腕が感じていた先輩の体の熱を失い寂しく感じる。

「城ヶ崎君も来て」
「はいはい」

 アメニティのしっかり用意された宿の部屋には歯ブラシも人数✕食事の分だけあるので助かるよね。
 洗面台の大きい鏡の前で、野坂先輩と並んでハミガキをしていると変に不思議で照れくさい。
 僕の家にお泊りしてくれた日をいやおうでもなく思い出してしまう。
 キス以外、……なんにもなかったけど。

 そろそろ、いろいろ限界です。
 先輩といっぱいキスして、イチャイチャしたいと思ってしまいますよ。
 これって至極健全なことでしょう?
 ……まだ我慢します。
 だってお酒に酔った先輩を襲ったら、大切な二人だけの夜をちゃんと憶えていてくれないかも知れない。

「城ヶ崎君」
「はい?」
「眠い」
「はいはい。寝ましょうね」

 二人でそれぞれの布団にごろんとして。
 普段はしっかり者の野坂先輩がこんなに無防備な姿をさらけ出してくれているんだもの、僕だけの特権だと思いたい。

「私、城ヶ崎君と二人っきりになっちゃうとポンコツになっちゃうみたい」
「ははは。先輩がぽんこつなんて。いつもと違うってことでしょ? でもすっごく可愛いですよ」

 真っ赤な顔になった先輩は布団にもぐりこんで、頭まですっぽりと被ってしまう。
 僕は先輩にいじわるがしたくなる、ちょっかいをかけたくなる。

「城ヶ崎君、電気消して」
「僕は明るくても良いんだけどなあ。先輩の顔が見たいから」
「ダメですう。寝顔は見られたくないので。布団から顔を出しませんよ〜」
「ではですね、電気を消すから布団から顔を出してください。そんなもぐったりしたら熱がこもるし、息もしづらくないですか?」
「うーん、たしかに。じゃ、灯り消してください、城ヶ崎君」
「はいはい」

 電気を消すと、素直に先輩は掛け布団から顔を覗かしてくる。
 その仕草がまたたまらなく可愛い。
 月明かりが窓から注ぎ込んで、電気を消しても目が慣れてくると部屋の中も僕の隣りに寝る先輩の顔もよく見える。

「城ヶ崎君、手」
「手?」
「手、繋ごう。城ヶ崎君とどこかくっついて寝てたい」

 かあ〜っ。僕は照れて顔が熱くなる。

 野坂先輩の浴衣姿が改めて見るまでもなく色っぽかったのを思い出して、急に心臓のドキドキが強くなった。

「あ、甘えん坊ですね。先輩は」

 いかん。
 横に寝てる先輩の視線を感じる。
 僕の理性よ、どうか保ってくれ。

 伸ばされた手を握ると、ちっちゃくてしっとりとしてて柔らかい先輩の手が僕の手に絡まる。
 はあぁ――っ、生殺しだ。

 ええっと、キスして、抱きしめて、抱きしめて、ぎゅっと抱きしめて。
 ううっ、我慢、我慢。

「先輩?」
「んっ?」
「明日は早めに起こしてあげるから、誰も起きてうろちょろしないうちに部屋に戻ってくださいね」
「噂になるから?」
「そうですよ。先輩に変な噂がたったら大変です」

 まあ、その一端は僕がさせてるわけだから、責任がある。
 野坂先輩は社内ではしっかり者で仕事が出来て、清楚なイメージで男性社員にも年下の女子社員の憧れでもあるわけだし。
 先輩の評判をおとすわけにはいかない。

「城ヶ崎君とこうしていたいの。ずっとおしゃべりしたいのにな」
「おしゃべり……ですか? いつでも出来ますよ。先輩ならうちにも毎日でも来てくれて良いから」

 野坂先輩がもぞもぞ動いて、僕にくっついてくる。
 ぬわあぁぁ〜!
 そんなぴったりくっつかれると、すっごくうれしい! でもですね、非常に困るんですけど。
 あー襲いたい。

「城ヶ崎くんとならおしゃべりもイチャイチャも……今がいい」
「先輩、酔いが抜けてます? そんなに煽られると男としてはこの状況ですっごいまずいんですけど」
「酔い? うーん。酔ってないよぉ」

 ……いや、まだ酔ってますよね。
 あー、そんなに抱きつかれたら、僕、困りますっ!

「キス、していい? ……先輩」
「いいよ」
「僕と付き合ってくれる? 正式に」
「うん、いいよ」

 もお、いつもつっぱねるくせに。
 これは先輩が夢見心地でいる証拠だ。
 この会話はきっと朝には憶えていてくれないんだ。

 僕が抱きしめ返すと、先輩も応えるように抱きしめ返してくる。

「幸せだな〜」
「私も幸せだな〜」

 社員旅行でまさか同じ部屋に泊まれるとか思わなかったから嬉しい。
 で、欲を言ったら今度はやっぱり二人きりで気兼ねなく旅行がしたいです。

「キス……して」
「酔っ払いにはキスしません」
「ケチ〜」
「あのねえ、先輩は自分が可愛いのを自覚してくださいよ? そんなに可愛い顔で迫られたら僕だって我慢がきかなくな――」

 ちゅっ……。
 唇に、柔らかい感触!
 先輩から重ねられた唇が熱くて柔らかい。
 布団のガサゴソする音と甘い口づけの音、甘い息づかいの音だけがして。
 先輩にしがみつかれて、彼女の吐息が僕の胸元にかかる。

 僕は先輩の頬を両手で包んで。
 見つめて。

 それから――。

 歯止めが利かなくなってしまいそうなキスして、合い間にちゅっと軽く何度か重ねて、それから強く思いがこもった。
 先輩のぷるぷるの唇を喰《は》むように口づけると、僕の体の芯が甘く痺れた。
 やばい……。
 ここらで止めないと――、止まらなくなる。

「茜音さん、茜音……」
「城ヶ崎君、私の名前呼んだ」
「茜音さんも呼んで僕のこと、悠太って」
「ゆ、ゆーた。ゆうた……。ねえ、城ヶ崎君」
「はい?」
「名前呼ぶの照れるね」
「照れますね」

 なんだろ。
 この安心感は――。
 どきどきすんのに、おもいっきしどきどきしてんのに、僕は野坂先輩といるとホッとする。
 綺麗な濡れた瞳は吸い込まれそうな輝き……、透明感のあるマシュマロみたいな肌……つやつやで柔らかい唇、先輩はいつでもいい匂いがする。
 
 先輩といると気持ちが透きとおる――、好きだけが残る。
 好きだけがあふれてあふれて、好きって気持ちだけが先輩といると湧き上がってくる。

 どうして、こんなに。
 僕は野坂先輩のことを好きなんだろう。

「悠太っていうんだよね。城ヶ崎君って」
「そうですよ、茜音さん」
「別人みたいだね」
「落ち着かない? ねえ、茜音さん。……別人みたいな関係に進みませんか? 僕たち」

 ぎゅっと抱きしめた野坂先輩のぬくもりが愛しい。

「別人みたいな関係……?」
「つまり。……僕のこと、好き?」
「……うん、好き」
「そろそろ恋人同士になろうってことです。先輩、僕と新しい関係に進んだら、きっともっと楽しいですよ」

 僕の腕のなかの先輩からの返事はない。
 ん〜、早急すぎた?
 ずいぶん、僕は待ったつもりなんですけど、時間の感覚なんて人それぞれだって言うから急だったかな。

 こんないい雰囲気なのに、またもや断られちゃうのかな。
 すっごく手強いよ、野坂先輩は。

「返事、聞かせてください。先輩?」
「……すうー。……すうー」

 寝息?
 これはもしや寝ちゃってんの?
 おーい、先ぱぁい。

「あーあ、またはぐらかされちゃったなあ」

 でも、まっいいか。
 今は野坂先輩が僕の腕のなかで安心しきった様子でぐっすり眠ってくれて嬉しいです。

 おとぎ話のお姫様ってこんな感じなんだろうな。
 可憐でどこか天然で、頑張ってて可愛くって。

 今夜の先輩のこの可愛すぎる寝顔が見られるのが僕だけだって、嬉しいです。

 常盤社長のこととか、中山さんのこととか和久井さんのこととかさ、心配で気になりだしたら不安な気持ちが止まらないけど。
 今は僕が先輩を独占してる。

「少しは自信を持っていいってことでいいのかな? 先輩」

 僕は眠る先輩の頬に口づけた。
 ぷにっと弾力がある唇にもまた口づけたかった。
 いやいやいや、いかんでしょ。
 いろいろと、そのー、そう、いろいろとおさまりがきかなくなるから困る。
 制御不能になるわけにはいかない。
 あー、僕は先輩の番犬であって先輩の同意なしにオオカミ男子にはなってはならないのです。

 きっとこれ以上キスしたら、今夜は我慢できなくなっちゃう。

「はあー。これはこれで幸せな時間だよなあ。僕、眠れるかな……」

 幸せな気分が胸を支配している。
 窓から見える満月がとても綺麗だった。 
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