番犬として飼った彼は、オオカミでした
第三話



○真央の部屋(朝)

カーテン越しから朝日の光が差し込む。部屋がほんのり明るく照らされる中、スマホのアラーム音が鳴る。
 

〜♬

私は朝に弱い。非遮光カーテンにして光を通すようにして、明るさで朝の訪れに気付くようにしている。それでもなかなか起きられないので、スマホのアラームは必須だ。

真央「うーん」

まだ開かない重い瞼を擦りながら、スマホのアラームを止めるために手を伸ばす。

真央(なんか、いつもより布団があったかい・・・。)

布団の温もりが恋しくて、また潜り込む。また夢の世界に戻りそう。うとうと、と夢の世界と現実世界の狭間を彷徨(さまよ)う。


真央「・・・・・・んっ?」

違和感を感じて、ガバッと布団を捲ると、玲央が布団の中に潜り込んでいた。

真央「玲央?!」

驚いて思わず大きな声になる。その声に気付いて、「んー?」と言いながら瞼を擦っている。

真央(なんか、猫みたい。・・・かわっ・・・。って違う違う。)

一瞬、可愛いという感情が芽生えそうだったが、瞬時にその感情に蓋をした。


真央「なんで私のベッドに寝てるの?!」

玲央「あったかそうだったから?」

私の質問に何故か疑問系で返された言葉に、私は返す言葉が見つからない。


真央「なっ、・・・もう、絶対ベッドには入ってこないでよ?」

顔が熱くなるのを感じて、眠そうな玲央を残して洗面所へと向かう。鏡に映る自分の顔は耳まで真っ赤に染まっていた。


真央(玲央のせいだ。・・・調子が狂う)


最近の玲央は様子がおかしい。玲央とは幼馴染で、部屋で2人きりでゲームをしたりすることもあったけど、私に触れてきたことなど、1度もなかったのに・・・。

真央「玲央だったら、何も起きないと思って、一緒に住んでも大丈夫だと思ったのに・・・」

鏡の自分に向けてポツリと呟く。

真央(玲央は私をからかって、面白がってるんだ。くそっ。こんなことで照れてたら負けだ。)

顔を洗って、鏡に映る自分を見て気合を入れた。


真央(あっ、急いで準備しないと)

時計を見てハッとする。ベッドの温もりにうとうとしていたせいで、朝の貴重な時間が削られていた。今日は、爽太先輩と朝一緒に登校する約束をしていたので急いで準備をする。


真央「玲央〜?私、今日は爽太先輩と学校行くから、先に出るよ?」

玲央「・・・・・・」

返事がないけど、時間も迫ってきていたので、家を出る事にした。



○マンション入り口(朝)

急いで外に出ると、爽太先輩がスマホを弄りながら待っていた。

真央(爽太先輩、朝からかっこいい〜)

爽太先輩の姿が、視界に映ると私のときめき数値は上昇する。

爽太「真央ちゃん、おはよう」

柔らかな笑顔を浮かべる。先輩は喋り方も朗らかで優しい。

真央(イジワルな玲央とは正反対・・・)

真央「おはようございます」

爽太「昨日、大丈夫だった?」

真央「え?」

爽太「・・・番犬」

"番犬"という言葉にドキッと心臓がとび跳ねる。
先輩に玲央のことがバレてしまわないか、心がどよめく。

真央「あぁ、昨日は電話切っちゃって、すみませんでした」

爽太「全然大丈夫だよ。真央ちゃんが犬飼ってたなんて、知らなかったな〜」

真央「最近・・・?番犬として、飼い始めたので・・・」

嘘が下手くそで、しどろもどろになってしまう。


爽太「今度、番犬君に会いたいなあ。いつ会わせてくれる?」

真央「ははっ、ちょっと躾がなってない番犬で・・・」


真央(うっ、番犬には・・・、永遠に会わせられそうにないです・・・)


先輩は優しい口調で、柔らかい笑顔を向けてくれる。

真央(初めての彼氏が爽太先輩で良かったなあ)


爽太先輩と話していると、ポカポカと気持ちまであたたかくなる。なるべく長く一緒にいたくて、ゆっくり歩いたはずなのに、あっという間に学校に到着してしまった。


○学校正面玄関・下駄箱(朝)

校舎に1歩足を踏み入れると熱気と生徒の笑い声に包まれ、エネルギーが爆発してるようだった。

爽太「じゃあ、またメールするよ」

真央「はい」


玲央「真央〜!!」

遠くの方から走ってくる玲央の姿が見える。爽太先輩も立ち止まり、何事かと彼に視線を向ける。

玲央「はい、真央の分のお弁当」

ポン、とお弁当箱が入っている巾着袋を渡された。

真央「ありが・・・、」

お礼を言って受け取ろうとするも、隣に爽太先輩がいることを思い出して、言葉が止まった。

真央(爽太先輩の前で、お弁当とか渡されたら、変な誤解されちゃうじゃん・・・)

爽太「・・・・・・お弁当?」

この状態に、爽太先輩は不思議そうに首をかしげている。

真央「あ、あの・・・、玲央のお母さんが・・・作ってくれて・・・」

玲央「俺、母ちゃんいないけど」

爽太先輩に勘違いされないようにと、咄嗟に嘘をついたのに、一瞬で、玲央に言い消された。

真央(爽太先輩に、誤解されないように、わざと嘘ついてるのに・・・)

ギロリと玲央を睨みつけると、そんな私を見ても、余裕そうにニヤリと笑っている。

真央(こいつ・・・、全部分かっててやってるな)


爽太「あぁ、真央ちゃんの幼馴染くん?」


玲央「はい。幼馴染くんです。昨日から、番犬くんにもなり・・・」

真央「ああああああああ」

『番犬になった』と言いかける玲央の言葉を遮るように、声をかぶせた。そして、玲央の腕をグイっと引っ張り、爽太先輩から離れたところまで連れて行く。


真央「ちょっと!爽太先輩には言わない約束でしょ?」

玲央「・・・なんのこと?」

分かってるくせに、分からないふりをしている彼に、少しずつ苛立ち始める。

真央「———だから!玲央が番犬になったことは・・・」

思わず声を荒げてしまった。この時、私は背後にいる人の影には気付いていなかった。


爽太「・・・・・・番犬って?」

背後から聞こえる声に驚いて振り向くと、爽太先輩が、顔を歪めていた。



真央(番犬のこと、爽太先輩に聞かれた?!)




———同居生活2日目にして、ピンチ到来。

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