カンパニュラ
chapter⑧

ここへ来て5週間目が終わろうとしている。この格好でほぼ無言で行う作業が私を蝕んでいくようだ。

秘書課でもあまり話さなかったけれど、大きな違いはここのクリーンルームでは製品が主役なこと。普通のオフィスでは人が主役だと思うのだけれど。

2週間で辞めると言いそうになったけれど、押し留まったのは私が‘鈴と交代して’と言ったから。その意地だけで勤務は続けているが、もう限界だ…我慢できない。

今日、本社からパパが会議のためにこっちに来るので、一緒に夕食をと約束しているから、その時に伝える。

勤務を終えて私服に着替えていると、一緒に仕事を終えた富山さんは先に着替え終えて

「お疲れさまでした、小野田さん」

と帰って行く。初めに仕事説明をしてくれた時には親切な感じだった富山さんだが、今は最低限の挨拶しか口にしないコミュ障気味の人だと思う。まあ、こういう勤務にぴったりの人だとは思うわ。

一旦マンションへ帰り髪を整えないと出掛けられないわね。パパの会議終了後、迎えに来てもらうようにメッセージを送って、朝より冷えた空気の中を帰宅した。
< 101 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop