カンパニュラ
chapter⑫

年明けに母からの手紙を受け取った。

それは年始の挨拶と私の体調窺い、それから婚約への祝辞から始まっていた。それに続いて、11月から臨床心理士のカウンセリングを受けていることが、几帳面な文字で綴られている。

‘まだまだカウンセリングは続きますがそれは私自身の問題です。ただ、鈴に何もしてあげることの出来なかった母親だとはもう自覚しています。そのことについては、私の自己満足で申し訳ないけれど謝罪させて下さい。鈴には本当に申し訳ないことの連続でした。ごめんなさい。鈴の心と体の傷を毎朝思いながら心から陳謝し、そして勝手ながら鈴の健康と幸せを願っています’

十分だった。特に母を恨んだこともなかった。出来ない方が可愛いのかと子ども心に思ったことはあったけれど、私は好きにお稽古をさせてもらえたことに感謝している。

「また読んでるのか?温かい手紙だよね」

1月も後半になった週末の朝、私のマンションに泊まっている陽翔さんがバスルームから出て来て私を後ろから抱きしめる。

「鈴も手紙を書いてみる?手紙ありがとう、っていうだけでも、まだ寒いね、っていうだけでもいいんじゃないか?カードとか、どう?」
「そうしようかなって思って、また読み直していたんです」
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