カンパニュラ
chapter⑦

昨日教えてもらった鈴のマンションへ迎えに行くと、彼女は最初に会った日と同じベージュのショートブーツにキャメルのコート姿で現れた。

「おはよう、鈴。どうぞ」
「おはようございます。失礼します」

車の横でお辞儀してから、俺の開けたドアから乗り込もうとした鈴は戻ってくると

「車、暖かそうだから」

とコートを脱いでから助手席へ収まった。ホワイトパンツにベージュのセーターというとてもシンプルな装いが似合っている。俺も運転席へ乗り込むと

「ネックレス、似合ってるね」

一粒ダイヤのネックレスが目につき声を掛ける。鈴は‘ああ’とでもいう風にネックレスに触れると

「これは20歳の誕生日に恵利さんから頂きました。恵利さんは祖母の妹です」

と教えてくれた。道端さんが接触した人で鈴に基本的な料理を教えた人だったな、と思い出すと同時に、男からのプレゼントでなくて良かったと思う。

「恵利さん…お姉さんのおばあさまの名前は?」
「祖母は喜恵です。しりとりになっているんですって」
「へぇ、どこから?」
「祖母のお母さんは亜喜で喜恵、恵利、利夫…恵利の利で弟の利夫さんです。陽翔さんの妹さんのお名前は?」

鈴はイエス、ノーで答えるときも、こういう話題のときも、相手に話を振るのがうまいと思う。決して自分だけが話すようなことにはならない配慮が出来るのだと思う。
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