エリート警視正の溺愛包囲網〜クールな彼の甘やかな激情〜

四 急接近

八月中旬の日曜日。
咲良は、一か月ぶりにひだまりを訪れた。


マハロには年末年始以外の店休日がなく、お盆期間も営業している。しかし、一店舗につきネイリストが二十名ほど配属されているため、シフト制ではあるものの休暇はきちんと取れる。


お盆シーズンは客足が減ることもあり、スタッフは半数しか出勤しない。咲良も二日間の夏季休暇とシフトを合わせ、今日からの四日間は休みだった。


初日の今日は、ひだまりを訪れた。
前回の土曜日に続いてボランティアの日が日曜日になったのは、ひだまりの事務員とスケジュールの話し合いで決まったこと。あくまで偶然だった。


けれど、咲良の心の片隅には桜輔に会えるかもしれない……という気持ちもあった。


食事に行ったとき、彼の非番は土日だと話していた。警察官と聞いていたからシフト制なのかと思っていたが、そうではない部署もあるのだとか。 


警察組織に関する知識はなく、個人的なことを詮索するのも気が引けて詳しくは訊けなかったものの、土日が休みなら今日ひだまりに来る可能性だってある。


「こんにちは」

「あっ、咲良ちゃん! こんにちは」


咲良の挨拶に藤野が笑みを返し、周囲にいた入居者たちも笑顔になる。リビングが一気に明るい雰囲気に包まれ、みんなが我先にと咲良に話しかけた。


「ほらほら、みなさんまずは咲良ちゃんに休憩させてあげないと。今日も暑い中、ここまで来てくれたんだよ。お話はネイルやマッサージのときにね」


入居者たちの勢いに圧倒されかけた咲良に、藤野がすかさず助け船を出す。咲良は彼にお礼を込めて会釈をし、ひとまず荷物を置かせてもらった。

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