幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
1.姫はもらって帰ります
とにかく早く話を進めたい私の両親と、早く私に会って話してみたいお相手。

さっそくその週末、高級そうな料亭で顔合わせをすることになった。

だけど、両親付き添いの元でというのはなんとか回避した。

そんなことをしたら、相手方の親はともかく私の親は強引に話を進めてしまいかねない。

ししおどしの音が一定のテンポで鳴る中、風情も情緒もどうでもいい私は暇すぎて欠伸が出る。

お相手は車が事故の渋滞に引っかかって少し遅れているとのこと。

彼がいつ現れるかわからないから、リラックスして足を伸ばしているわけにも行かない。

いや、そもそもお腹がきつくてリラックスもできない。

今日の私は着物姿。お金がないって言ってるくせに着物をレンタルしてヘアメイクも頼むあたりに両親の切実さを感じてかなりプレッシャーだ。

とにかく否が応でも相手に気に入ってもらって嫁に行かせたいらしい。

こちらにしてみれば不本意極まりない話だ。

もう来るなら早く来てほしい。

こちらの気持ちがすでに折れそうで、今すぐにでも帰ってしまいたくなる。


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