Fortunate Link―ツキの守り手―
「それで。
あなたの方からわざわざ赴いてくれて…
一体何の用なのかしら?」
「そこの馬鹿を迎えに来てやっただけだ」
起き上がったばかりの俺を指差し言う。
…馬鹿とは何だ。馬鹿とは。
「そいつは私のもんだ。
勝手に学校から持ち出さないでくれるか?」
聞き捨てならない発言。
おいおい。
いつから俺がお前の物になった?!
「へぇ。面白い関係なのね」
こら。そこも納得すんな。
「でもこのまま貴方を帰らせる訳にはいかないの」
白石さんは黒い笑みを浮かべた。
「?何言ってやがんだ?」
アカツキが怪訝な顔で問い返す。
と、その途端。
開いていた扉から雪崩のような勢いで黒スーツの集団が部屋の中へと入ってきた。
どうやらこの黒スーツの連中がSPとかいう奴ららしい。
真っ直ぐにアカツキの方へと向かっていく。
やっぱり目的はアカツキらしい。
だがそんなイカつい連中が押し寄せてきても、アカツキは落ち着き払っていた。
むしろその口元が一瞬ニッと笑ったのを垣間見た気がする。
コイツは「売られた喧嘩は買う」が信条の喧嘩上等女だ。
勿論、黒スーツの連中はアカツキを捕まえることだけが目的であって、危害を加えるつもりは全く無かったんだろうけど…。
相手が悪かった。
アカツキは目の前に立ちはだかる男達に臆せず、遠慮なく拳を振るった。
「大人しく…ガッ」
「…何す…ウゴッ」
「グフッッ」
「何を…」
二の句を継がさず、バッタバッタと倒していく。
女の子には手を出さないという立派な道徳心を持つ彼らは、あっという間に打ちのめされてしまった。
思わずそんな彼らに少しだけ同情してしまった。
残って立つのは、得意顔のアカツキだけ。
「何とも張り合いの無い相手だったな」
…その割りにすごく楽しそうだ。