花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「桜! ずっと描いてた桜の絵」
彼が「フッ」と優しく笑ったのが聞こえた。
「ハズレですか?」
「いや、正解。いいよ、目を開けてごらん」
やっぱり桜の絵なんだ。
桜並木の絵、桜の枝、庭の桜の樹、それとも花吹雪みたいな感じとか……いろんなパターンの桜の絵を想像する。
櫂李さんが描いたんだから、きっときれいで優しいの。
想像しながら私はゆっくり目を開ける。
額縁が目に入って、それから……。
「え……」
いつのまにか後ろに立っていた彼が、私の肩に両手をポンと置く。
「きれいだろ? この桜」
そこにあったのは、桜柄の臙脂色の浴衣を着た女性の絵だった。
大きさは縦五十センチメートルくらいだろうか。
上を見る横顔に、黒いまとめ髪が刷毛の筆致で繊細に描かれ、肌は透けるような乳白色で描かれている。
手にはりんご飴、唇がほんのりと紅色に染まっている。
「これ……私?」
彼が「うん」と頷く。
「今まで描いた中で一番難しかった。何度も何度も描き直しても全く納得がいかなくて」
耳元で話す彼の吐息が肌に触れる。
「描きたいものは目の前にあるのに」
肩が、耳が、熱を帯びたように熱くなる。
「本物の美しさは全然表現しきれなくて。それでもやっと、なんとか納得できるものが描けた」
彼が「フッ」と優しく笑ったのが聞こえた。
「ハズレですか?」
「いや、正解。いいよ、目を開けてごらん」
やっぱり桜の絵なんだ。
桜並木の絵、桜の枝、庭の桜の樹、それとも花吹雪みたいな感じとか……いろんなパターンの桜の絵を想像する。
櫂李さんが描いたんだから、きっときれいで優しいの。
想像しながら私はゆっくり目を開ける。
額縁が目に入って、それから……。
「え……」
いつのまにか後ろに立っていた彼が、私の肩に両手をポンと置く。
「きれいだろ? この桜」
そこにあったのは、桜柄の臙脂色の浴衣を着た女性の絵だった。
大きさは縦五十センチメートルくらいだろうか。
上を見る横顔に、黒いまとめ髪が刷毛の筆致で繊細に描かれ、肌は透けるような乳白色で描かれている。
手にはりんご飴、唇がほんのりと紅色に染まっている。
「これ……私?」
彼が「うん」と頷く。
「今まで描いた中で一番難しかった。何度も何度も描き直しても全く納得がいかなくて」
耳元で話す彼の吐息が肌に触れる。
「描きたいものは目の前にあるのに」
肩が、耳が、熱を帯びたように熱くなる。
「本物の美しさは全然表現しきれなくて。それでもやっと、なんとか納得できるものが描けた」