花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「でも、一か月じゃ全然お給料が足りなくて」
もっと大人っぽいものをあげたかったけど。

「だけど身につけてもらえるものが良くて……」

私は自分の髪を一つに結ぶみたいなジェスチャーをした。

「髪を結んで欲しいです」
ちょっとだけ照れくさい。

「あ、あの! でも、ちゃんと京都の職人さんの手作りのしっかりしたやつで」
私が言いかけたところで、彼は「くっくっ」と堪えるように笑った。

「そんなに言い訳のように言葉を並べなくていい」
そう言うと、彼は髪を結んでいた紐を解いて私のプレゼントした組紐で結び直してくれた。

「いつもそばに置いておけるものを選んでくれたんだろ? 同じ考えで選んだよ、私も」
そう言って笑ってくれる。
「今まで貰ったどんな物より嬉しい」
そんな風に言ってくれて嬉しい。

「でも、来年はもっと金額的にも良い物をあげられるようにアルバイト頑張ります」
「学生の本分は学業だよ」
櫂李さんはまた、少しだけお父さんみたいなことを言う。
なんて思ったけど、内緒。

「あ、その前に四月は私の誕生日で五月は櫂李さんのお誕生日だから、その頃にまたプレゼント交換しましょうか」
「いいね。五月には結婚記念日もあるからどこかへ行こうか。バタバタしていて新婚旅行にも行けていなかったから」
彼の提案が嬉しくて、「うんうんっ」と頷く。

あ、結婚記念日には夫婦の記念写真なんかも撮れたら嬉しいかも。

デザートのクリスマス飾りのついたケーキを食べながらそんなことを考えていた。

幸せなクリスマスを過ごし、大晦日を迎え、新年には二人で初詣なんかにも行った。
こんなに毎日がワクワクして気持ちが明るいのはいつ振りだろう。

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