花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
***

それから二日後。

「よお、木花」
バイト中に颯くんに声をかけられる。

あれから何度もここで顔を合わせてるけど、結局プレゼントのお返しはできていない。
それでも彼は今まで通り、普通の幼なじみだ。
あれ以来、二人で食事に行くようなこともしていない。

「今日火曜なのにバイトなんだな」
「うん、春休みになったからシフト増やしたの」
本当は、気を紛らわせるために今日からシフトを増やした。

「いい加減シフト教えてくれよ」
「あはは。自分でも覚えてないから。今日もホットコーヒーでよかった?」
「うん」
彼はシフトを教えていなくても、私のバイトの日には必ずコーヒーを買いに来る。

「木花、あのブレスレッ——」
「はい、ホットのラージ」

そう言ってコーヒーを差し出した私のカウンターに置いた左手に、彼の視線が下りた気がした。

「え?」
「ん?」
颯くんが何かに反応する。

私は櫂李さんと別れたことをまだ周りに悟られたくなくて、結婚指輪をつけている。
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