花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
***

「それから彼は……」
櫂李さんは何かを言いかけて、私の顔を見ると言葉を止めた。

「手術、できるんですよね……?」
「菊月先生は執刀してくれると言っていたよ」
「良かった」
と安堵してから、彼の他人事のような口振りが気になった。

「……櫂李さんは、手術を受けるつもりなんですよね?」
私は歩くのを止めて彼に尋ねる。

「ああ」

即答してくれて、少しだけホッとした。

「だから、離婚しようなんて言ったんですね」
「それは別の話だ。離婚の理由はこの前言った通りだよ」
彼の言葉に、私は子どもみたいに首を振る。

「嘘。あなたはそういう人だもん」
「木花、違うよ」

「看病だってなんだって私は大丈夫です、だから——」
「木花!」
彼は私を黙らせようとする。

「だって……年が明けてから、ずっと一人で考えてたんでしょ? 悩んでいたんじゃないですか?」

だからアトリエに籠る時間が長かったんだ。だからわざわざ休業なんて言ったんだ。
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