花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
颯くんが買って来てくれたポップコーンを食べながら、二人で観覧車に乗り込んだ。
狭いゴンドラに向かい合って座る。

「高いところは大丈夫なの?」
「お前、俺ん家からの景色見たことないのかよ」
「あ、それもそうか」
「あはは」と笑って、だんだんと高くなって行く景色をながめる。

頂上に近づくと、遠くにベリが丘の街が見えた。

颯くんの家のマンション、市庁舎、総合病院……。

そこでまた、櫂李さんのことを思い出してしまう。

「……颯くん」
「ん?」

「あのさ」
「どうした?」

「……櫂李さんの手術って、いつなのかな」

私の質問に、颯くんは一瞬だけ沈黙した。

私だって、こんな質問はしてはいけないってわかっている。
だから彼の方じゃなくて窓の外を見ながら聞いた。

離婚の話を切り出されてから、もうひと月以上が経つ。

「そのうち」
彼がつぶやくように答える。

「そのうちっていつ? もうすぐ?」
不安になって、彼の方を見る。

「もう木花には関係ないだろ?」

「関係ないなんて、そんなことないよ。だって私は——」

そこまで言った瞬間に、颯くんが私を引き寄せて唇を奪う。

私は抱えていたポップコーンを落としてしまった。
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