花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「バタバタしてしまってお礼が遅くなってしまいましたけど、桜の絵、ありがとうございました……」
どうしても声が掠れる。
「おかげさまで祖母、は、悔いのない最期を……迎えられたと——」

そこまで言ったところで、立ち上がった櫂李さんが私を抱きしめてくれた。

「大変だったね」

何気ないひと言に救われる気持ちになるのは、私が彼を好きだからなのかな。

「……学校、ですよ」
涙を拭って必死で冷静になって、彼に言う。

「ああ、そうか。学生とこういうのはマズいのかな」
「学部が違うので大丈夫かもしれないですけど、構内では良くないんじゃないですか?」
戸惑う彼に私は涙目のままクスッと笑う。

「まあ、どちらにしろもう辞めるので大丈夫ですけどね」
「辞める? どうして?」
「お恥ずかしい話ですけど、私の家にはもうお金がないんです。大学に通っていると祖母が安心してくれるから通っていたんですけど、もうその必要もないので、奨学金っていう借金がかさむ前に辞めます」

分不相応に私立大に入学したのも大失敗だった。
アルバイトをしながら就職先を探さなくちゃ。

「君の身内はおばあさんだけだったのか?」
彼の質問に無言で頷く。

「そうか……もっと早く探せばよかった」
彼は何かを考えるようにしばらく黙っていた。


「木花、今夜もう一度私の家に来てくれないか?」


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