花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
***
「結婚……?」
その日の夜、言われた通りに櫂李さんの家を訪ねた。
畳の上で向き合ってうやうやしく正座をする櫂李さんの口から、予想外の言葉が飛び出した。
「私と櫂李さんが……ですか?」
「ああ」
彼はいたって冷静で、冗談などではなさそうだ。
「悪い話ではないだろう? 幸い私は絵が売れているから君の奨学金も払ってあげられる。好きなだけ勉強を続けたらいい」
「資金援助ってことですか? そんなのご家族が反対しますよ」
私は状況が飲み込めずに焦って尋ねる。
「いないよ」
「え……」
「私も君と同じで、もう肉親はいないんだ」
「そうだったんですか……」
同じだと聞いて、なんだか胸が騒ついてしまう。
彼も私と同じように孤独なのかな。
「で、でもだからって急に結婚なんて」
先日の責任でも感じているのだとしたら、そんな必要はない。
「自分でも突飛だと思うよ」
そう言って笑うと、彼はあらためて私の瞳を見つめた。
「木花に、私の〝ミューズ〟になって欲しい」
「結婚……?」
その日の夜、言われた通りに櫂李さんの家を訪ねた。
畳の上で向き合ってうやうやしく正座をする櫂李さんの口から、予想外の言葉が飛び出した。
「私と櫂李さんが……ですか?」
「ああ」
彼はいたって冷静で、冗談などではなさそうだ。
「悪い話ではないだろう? 幸い私は絵が売れているから君の奨学金も払ってあげられる。好きなだけ勉強を続けたらいい」
「資金援助ってことですか? そんなのご家族が反対しますよ」
私は状況が飲み込めずに焦って尋ねる。
「いないよ」
「え……」
「私も君と同じで、もう肉親はいないんだ」
「そうだったんですか……」
同じだと聞いて、なんだか胸が騒ついてしまう。
彼も私と同じように孤独なのかな。
「で、でもだからって急に結婚なんて」
先日の責任でも感じているのだとしたら、そんな必要はない。
「自分でも突飛だと思うよ」
そう言って笑うと、彼はあらためて私の瞳を見つめた。
「木花に、私の〝ミューズ〟になって欲しい」