花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
背の高さを感じさせる、低くて穏やかな声に引きとめられる。
「春海さん」
ハルミ……?
「彼女は私の遣いで来たんです」
守衛さんと一緒に振り返ると、背の高い男性が腕を組んで立っていた。
黒のような濃紺のような着物にグレーの羽織を着た和服姿で、肩よりも随分下まで伸びた色素の薄い長い髪を一つに結んでいる。
そこにいるだけで、空気が風を纏って軽くなるような不思議なオーラのある人だった。
「え? こんな時間に?」
「ええ、私が桜が欲しいと言ったのを、勘違いしてここに来てしまったようだ」
「勘違い?」
守衛さんは訝しそうだ。
「君、庭の桜で良かったんだよ。だめだよ、この桜並木を傷つけては」
彼はそう言って私に目配せする。
「口裏を合わせろ」ということだと理解する。
「あ、そ、そうだったんデスカ。勘違いしてオリマシタ」
我ながら、なんだかすごく棒読みな気がする。
「そういうわけで、枝を傷つける前の未遂で終わっていることですし、ここは私に引き取らせてくれませんか?」
「春海さんがそう言うのであれば。今後このようなことがないように気をつけてくださいよ」
「はい。厳しく言っておきますよ」
彼が穏やかに微笑むと、守衛さんは彼にハサミを渡して見回りの続きに行ってしまった。
「春海さん」
ハルミ……?
「彼女は私の遣いで来たんです」
守衛さんと一緒に振り返ると、背の高い男性が腕を組んで立っていた。
黒のような濃紺のような着物にグレーの羽織を着た和服姿で、肩よりも随分下まで伸びた色素の薄い長い髪を一つに結んでいる。
そこにいるだけで、空気が風を纏って軽くなるような不思議なオーラのある人だった。
「え? こんな時間に?」
「ええ、私が桜が欲しいと言ったのを、勘違いしてここに来てしまったようだ」
「勘違い?」
守衛さんは訝しそうだ。
「君、庭の桜で良かったんだよ。だめだよ、この桜並木を傷つけては」
彼はそう言って私に目配せする。
「口裏を合わせろ」ということだと理解する。
「あ、そ、そうだったんデスカ。勘違いしてオリマシタ」
我ながら、なんだかすごく棒読みな気がする。
「そういうわけで、枝を傷つける前の未遂で終わっていることですし、ここは私に引き取らせてくれませんか?」
「春海さんがそう言うのであれば。今後このようなことがないように気をつけてくださいよ」
「はい。厳しく言っておきますよ」
彼が穏やかに微笑むと、守衛さんは彼にハサミを渡して見回りの続きに行ってしまった。