花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
如月さんの書は動と静で言うなら静という感じで、繊細な筆で書かれた四文字が穏やかな雰囲気で掛け軸に収まっている。
箱書きに書いてくれた私たちの名前もとても優しい文字。
櫂李さんの言う通り、おしゃべりな彼からは想像できない作品だ。
「なんだよ〜そんなこと言うと、持って帰るぞ」
「褒めているんだ、作品を」
「おい、人間性も褒めろよ」
二人のやり取りに、思わず笑ってしまう。
「透子にも人前で喋るなって言われるんだよな。テレビのコメンテーターなんかやったら絶対人気が出る自信があるんだけどな。イケメンで楽しい書道家のお兄さんって」
透子さんの名前にドキッとしてつい身構える。
「作品の価値が下がるのが目に見えているからな。君を知っていると、君の書から君の声が聞こえてくることがある」
「それの何が悪いんだよ。俺のこの渋い声が聞こえてきたら嬉しいだろ。ね、木花ちゃん」
また急にこちらに会話のボールがやってくる。
「え、えっと……お茶、淹れ直してきますね」
どう返していいのかわからず、笑ってごまかした。
今日はお手伝いさんがいないから、私がお茶を淹れている。
「逃げられた……木花ちゃん、いい子だな。しっかりしてるし」
部屋を出て台所へ向かう背中で如月さんの言葉を聞く。
「しなくていい苦労をしてきているからね」
櫂李さんが言うのが聞こえた。
箱書きに書いてくれた私たちの名前もとても優しい文字。
櫂李さんの言う通り、おしゃべりな彼からは想像できない作品だ。
「なんだよ〜そんなこと言うと、持って帰るぞ」
「褒めているんだ、作品を」
「おい、人間性も褒めろよ」
二人のやり取りに、思わず笑ってしまう。
「透子にも人前で喋るなって言われるんだよな。テレビのコメンテーターなんかやったら絶対人気が出る自信があるんだけどな。イケメンで楽しい書道家のお兄さんって」
透子さんの名前にドキッとしてつい身構える。
「作品の価値が下がるのが目に見えているからな。君を知っていると、君の書から君の声が聞こえてくることがある」
「それの何が悪いんだよ。俺のこの渋い声が聞こえてきたら嬉しいだろ。ね、木花ちゃん」
また急にこちらに会話のボールがやってくる。
「え、えっと……お茶、淹れ直してきますね」
どう返していいのかわからず、笑ってごまかした。
今日はお手伝いさんがいないから、私がお茶を淹れている。
「逃げられた……木花ちゃん、いい子だな。しっかりしてるし」
部屋を出て台所へ向かう背中で如月さんの言葉を聞く。
「しなくていい苦労をしてきているからね」
櫂李さんが言うのが聞こえた。