恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「だいたいあの秘書の件も、ちょっと驚かすだけで良いって言ってあったはずだ。それなのにお前は、まさか車で跳ねるなんて」
「ひどいですね、副市長が『どんな手を使っても市長を黙らせろ』って言ったんじゃないですか」
(それで高梨さんを? ひどすぎる……)
アライの言葉に胡桃は腹を立てる。

「それでこの女、どうするんだ?」
烏辺が言う。

「財布と名刺以外に荷物が無いからわからんが、市長と個人的につながっているということもないだろう。たしか市長の婚約者は美人で才女のはずだし、こんな女と何かあるとも思えん」
(どういう意味!?)
鹿ノ川の言葉にもムッとする。

「じゃあ解放するんですか?」
「いや、拉致してるからな」

「わ、私、誰にも言いませんから! 今だって何も見えてないですし」
それからしばらく、三人がヒソヒソと話し合っているような声が聞こえた。

「……明日港に連れて行って……」
(え?)

「……烏辺さんなら、海外にツテも……」
(え?)

「……失踪ってことにして……」
(絶対良くない相談してる……)

耳に入ってくる不穏すぎるワードたちに、顔から血の気が引いていく。
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