騎士団寮の家政婦、実は最強~最後の生き残りとなった彼女が望むものは~
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私の家は元々ナテュール王国に古くから存在する貴族の末裔だった。
その名もアルカンシエル伯爵家。
決して広くはないが豊かな大地。領民とも良好な関係を築き、平和に暮らしていた。
だが、この頃には精霊の存在は忘れられ、他領の土地では植物は枯れ始め不作が続いていた。
しかし存在を忘れられても精霊たちは人間界に留まっていた。いつかまた人間たちが振り向いてくれると信じて。
だからこそ何とか国として成り立っていたが、最後の精霊たちの思いすらも届くことはなかった。
そんな中でも唯一我が家の屋敷の庭では精霊が溢れ、精霊王に加護を授けられた者はいなかったが上手く共存関係を結んでいた。
その結果、うちの領だけが豊作続きで他領との差が浮き彫りになった。
もちろん精霊の存在を周知させるため、当主だった父はあちこちに説明をして回ったが誰一人として信じる者はいない。
そうこうしている内に精霊は精霊界へ帰り、国は荒れる一途を辿る事となる。
自然災害や魔物の脅威に晒され、当然その怒りは国の中枢に携わる人間や王族に向けられた。
今まで精霊の恩恵に肖って好き放題に贅沢三昧をしていた王族たちは、このままではマズイと思ったのだろう。
国民の怒りを別の者に擦り付けることを思いついた。
その標的とされたのがアルカンシエルの一族だったのだ。