仙女の花嫁修行
8.蟠桃会
西王母の屋敷では仙人と道士達がパタパタと忙しそうに動き回っている。蟠桃会と言う宴の為に、西王母の弟子やその孫弟子達が集められて、ひと月以上に渡って準備をするのだそうだ。
私は西王母の弟子では無いのだけれど、颯懔に「何でも経験だ。手伝いに行ってこい」と言われて放り出されたので、こうして御屋敷にやって来たという訳。
考えようによっては仙人の顔見知りを増やせるし、良い機会かもしれない。実はちょっとワクワクしている。
手伝いをさせて貰えれば宴の雰囲気だって味わえるしね。
蟠桃会には上級階級である神僊から、西王母の目に止まれば天仙や地仙も招待されるらしい。とは言え私は道士なので、さすがに招待はして貰えない。本番で給仕や案内係にでもなれれば、披露される舞や音楽をチラッとでも楽しめるんじゃないかと期待している。
着いて早々に可馨に会った。御屋敷の建物その物の整備を取り仕切っているらしく、多くの仙や道士達に指示を出している。タイミングを見計らって声をかけた。
「可馨様にご挨拶申し上げます」
「あら、明明! お手伝いに来てくれると聞いて待っていたわ。みんなもう、猫の手も借りたいほどに忙しくって。貴女は働き者だから来てくれて嬉しいわ」
「可馨様は働かせ上手ですね。そんな風に言われたら、頑張らない訳にはいかないです」
ムキッと力こぶをつくってみせると、「相変わらずね」とクスクス笑った。
「早速で悪いのだけれど、あちらに少しだけ屋根が見えるのが分かるかしら。あそこにある亭の整備を手伝ってきてちょうだい」
「分かりました」
庭園の中を歩いている間にも雑草を抜いたり剪定をしたりと、多くの仙達とすれ違った。
言われた場所まで辿り着くと、嫌そうな顔が出迎えしてくれた。
※亭……東屋のこと