花と共に、あなたの隣で。

8.黒い薔薇に込められた思い


 
「……………………」


 わかば園に、帰ろうかな。
 学校に登校して早々そう思った、11月のある日のこと。

 友達のいない私の机の上に、真っ黒な薔薇(バラ)が1輪と《消えろ。目障り。(うら)んでやる》と書かれた紙が置かれていたのだ。

 薔薇が咲く季節だと頭の片隅で思いつつ、()ぎる花言葉。単体だと決して良い意味の無いこの花が置かれている理由は……紙に書かれている言葉が表している?
 
 教室の隅でクスクスと笑っている集団がいた。こちらを見ているということは、犯人はあの集団で間違いないだろう。「友達がいないのに調子に乗るから」なんて言葉が聞こえてくる。


 これは……いじめというやつなのか……?


 私は置かれている薔薇と紙を手に取り、教室の扉の方へ向かった。今日は帰ろう。そう思い歩いていると、背後から飛んできた言葉。

「佐藤センセーと仲良くしてんじゃねーよ、ブース。死ね!!」

 ギャハハハハと甲高い声が響く教室は、何だか急に知らない場所の様に思えた。


 しかし……そういうことね。

 あの集団はきっと、佐藤先生のことが好きなんだ。何かと気に掛けてくれる佐藤先生とは、最近は体育の授業以外でも会話をすることがある。
 きっとあの人たちは、それが面白くないのだ。それでこんなことをしたのだろう。……理由を理解したからと言って、この黒い薔薇が許せる訳では無いが。
 
「……帰ろう」

 病気のこともあって、メンタルだけは鍛えられている私。

 ビックリしたし、面倒臭いなぁとは思ったけれど。
 その行為に心が傷つくことは無かった。



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