向日葵の園
「やめてください!名前だけでしょう…そんなもので気持ち悪い妄想して…狂ってます!」

「妄想なんかじゃないよ。きみは終わりそうな恋にも一生懸命だった。親友のことだって見捨てることができなくて苦しんでるじゃないか。いつもどこかできっと本当の恋や友情が手に入るって信じていただろう?苦しみを全部抱える必要はないんだよ。俺が消してあげる。きみが絶望した人類の神様になるんだ」

憂さんが私の手に注射器を握らせる。
あのオレンジ色の液体がたっぷりと入っている。

「これは…」

「今夜中に決めて。これを打つんだ。生贄を差し出すか、姉妹仲良くアレの中で眠るか。きみは特別だからね。選ばせてあげるよ」

「ここから一時期的に私を出して。逃げ出すかもしれないのに」

「その足だけで逃げる方法なんて無いでしょ。あぁ、今更だけど一応言っておくね。橋を落としたのも、もちろん俺だよ。都くん達が釣りに出掛けた時にね。俺ってさ、演出的なことが好きな男なんだよ。サスペンス感が濃くなって楽しかったでしょ。で、ヘリなんて一生迎えになんて来るはずないよ。呼ぶ気が無いんだもん。それに、きみは自分一人だけで逃げ出すの?本当にできる?」

「それは…」

「まぁ、やってみてもいいけど。すぐに捕まえちゃうよ。そしたら、コレだね」

憂さんがポケットから取り出したもう一本の注射器には
初めて見る紫色の液体が揺れている。

毒々しい、
一瞬で呼吸が止まってしまいそうな色だった。

「それは?」

「何者にも成れない、愚者の薬」

「ただの毒薬ってことですか」

「さぁ、選んで。恋か友情か。どっちがきみにとっての邪魔な光なのか」
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