無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?
正式な決定と
♡♡♡
一ヶ月後。
暦は大安。両親を交えて会った格式高い懐石料理店の個室へやって来た。
今日は、私と翡翠くんが横並びに座っている。正面には、穏やかにニコニコとしている私の両親と翡翠くんのお母さん。強面な翡翠くんのお父さんの顔も、今日は柔らかい気がした。
「翡翠くんが婿入りして下さるのは、嬉しい限りです」
父が上機嫌に言うと翡翠くんのお父さんの表情が一層柔らかくなった。
「こちらもです。口下手な息子が身を固める決意をしたのも、紫さんのおかげでしょう」
うんうん、と頷きながら私と翡翠くんのことを褒める親達。聞いてると恥ずかしくなって、彼に助けを求めるように見上げた。
「ーーどうした?」
低く、私にしか聞こえない小さな声で言われた。
「なんだか……恥ずかしくて」
ボソリと小さな声で言うと、彼はフッと笑って目を細め優しく微笑んだ。
「恥じる必要はない。紫のおかげというのは、事実。紫が、俺を選んでくれたんだ。次はーー紫に俺で良かったと思ってもらえるよう精進する」
彼の真面目で一途な言葉に、ドキッとした。
私ーー翡翠くんのお嫁さんになるんだ。私も、もっと好きになってもらえるよう頑張らないと……!
婚約者が、緑谷 翡翠くんだと正式に決まった今日を節目に改めてそう思った。