叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.17 君の決意を知って…… 雅之side
話は10日前にさかのぼる。
その日は、商談のためAMOCCの天羽和成が来社していた。俺の義妹の月名六花と共に。
紗雪からは婚約が決まった時に、今年の春から義妹がAMOCCに新卒で入社すると聞いていた。本当は先に調査で確認済みであったが。
義妹は現在インテリアデザイン事業部に配属されて、天羽は直属の上司であることから、こうやって勉強のために商談に同席させるのは自然なことだと思っている。
「では、この件は以上で。今回調整が入った部分につきましては、次回までに修正案をお持ちいたします」
真面目で誠実な表情で天羽はそう伝えてきた。
「ええ、大変助かります。しかし、ご無理のない範囲でお願いいたします」
実際、素早い対応には大いに助かっているが、AMOCC側に負担を強いるような真似はしたくない。そのため、毎回こうして確認するようにしていた。
「ありがとうございます。期日が厳しい時は必ずお伝えして、無理のないスケジュールをご相談させて頂きますので」
「ああ、そうして欲しい」
「今回、御社から頂いた案件。新しい試みに対して、部署を超えて社内全体で意欲を見せているんですよ。そこはベテランも若手も皆一丸となって」
実にありがたいことです、と天羽は語った。そして「月名さんもそう思わないかい?」と、隣に座る義妹に話を振った。
「はい。そうですね。リゾートホテルのカフェ全体のレイアウトということで、他の部署からも様々な視点からの案が出たりなど、社内コンペ状態になっておりました」
義妹は緊張気味でやや固くなりながらも、ハキハキとした口調でそう話してくれた。その様子はどこか紗雪を彷彿とした。
「そうなんですね。ウチとの企画によって御社が盛り上がるのは願ってもみないことですし、世代を超えてまとまるキッカケになったのは実に嬉しいことです」
実際、新たな挑戦をして成長を続けている企業との取り組みは、自分の仕事としても興味深く充実したものだった。
そんな本心からの言葉を伝えると、義妹の表情はパァッと明るくなった。だが、なぜかしゅんとした顔に変わってしまった。
ビジネスの場だから、あえて感情を出さないように表情のコントロールをしているのだろうと思っていた。
さらに言えば、そのコントロールが真顔を通り越して、なぜか悲しげな表情にまでメーターを振り切ってしまったのだと、そこまで考えていた。それもつい、紗雪を思い浮かべてしまったからだ。
義妹は、いつも俺が紗雪の実家を訪れた時には、「お義兄さん!」と懐いてくれていたが、今日この商談にやって来た時にはビジネスに徹した振る舞いをしており、そういう姿勢に好感を持った。
紗雪が大事だから、紗雪の妹も家族として大事な存在だった。
その日は、商談のためAMOCCの天羽和成が来社していた。俺の義妹の月名六花と共に。
紗雪からは婚約が決まった時に、今年の春から義妹がAMOCCに新卒で入社すると聞いていた。本当は先に調査で確認済みであったが。
義妹は現在インテリアデザイン事業部に配属されて、天羽は直属の上司であることから、こうやって勉強のために商談に同席させるのは自然なことだと思っている。
「では、この件は以上で。今回調整が入った部分につきましては、次回までに修正案をお持ちいたします」
真面目で誠実な表情で天羽はそう伝えてきた。
「ええ、大変助かります。しかし、ご無理のない範囲でお願いいたします」
実際、素早い対応には大いに助かっているが、AMOCC側に負担を強いるような真似はしたくない。そのため、毎回こうして確認するようにしていた。
「ありがとうございます。期日が厳しい時は必ずお伝えして、無理のないスケジュールをご相談させて頂きますので」
「ああ、そうして欲しい」
「今回、御社から頂いた案件。新しい試みに対して、部署を超えて社内全体で意欲を見せているんですよ。そこはベテランも若手も皆一丸となって」
実にありがたいことです、と天羽は語った。そして「月名さんもそう思わないかい?」と、隣に座る義妹に話を振った。
「はい。そうですね。リゾートホテルのカフェ全体のレイアウトということで、他の部署からも様々な視点からの案が出たりなど、社内コンペ状態になっておりました」
義妹は緊張気味でやや固くなりながらも、ハキハキとした口調でそう話してくれた。その様子はどこか紗雪を彷彿とした。
「そうなんですね。ウチとの企画によって御社が盛り上がるのは願ってもみないことですし、世代を超えてまとまるキッカケになったのは実に嬉しいことです」
実際、新たな挑戦をして成長を続けている企業との取り組みは、自分の仕事としても興味深く充実したものだった。
そんな本心からの言葉を伝えると、義妹の表情はパァッと明るくなった。だが、なぜかしゅんとした顔に変わってしまった。
ビジネスの場だから、あえて感情を出さないように表情のコントロールをしているのだろうと思っていた。
さらに言えば、そのコントロールが真顔を通り越して、なぜか悲しげな表情にまでメーターを振り切ってしまったのだと、そこまで考えていた。それもつい、紗雪を思い浮かべてしまったからだ。
義妹は、いつも俺が紗雪の実家を訪れた時には、「お義兄さん!」と懐いてくれていたが、今日この商談にやって来た時にはビジネスに徹した振る舞いをしており、そういう姿勢に好感を持った。
紗雪が大事だから、紗雪の妹も家族として大事な存在だった。