叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.19 痴話喧嘩ならまだいい
気がつけば、いつの間にかクッションを投げてボフッと命中した音がした。
「さっ……紗雪!?」
クッションをはがしながら、雅之さんは目を白黒させていた。私のこの意味不明な行動に、彼が驚くのも無理はない。
「ごっ、ごめんなさい!」
慌てて謝罪したけれど、自分でも、自分のこの訳のわからない行動に驚いていた。
雅之さんの話はちゃんと聞いていた。理解もできたと思う。
(でも、気持ちがまだ追いつかない!!)
「いや、あの……。雅之さんのお話はよくわかったんですけど……」
「俺が愛してるのは紗雪だけで、穂乃花にはもう何もないことをわかってくれたか?」
(あっ……愛!?)
情熱のこもった言葉や表情、声を向けられて、思わずヒュッと息を吸い込んだ。
言われ慣れていない言葉を突然聞かされて、心は完全に動揺していた。
そして、手は再びクッションを探している有り様だった。
自分に向けられた告白が嬉しいのに、現実に気持ちの切り替えが追いつかないため、その愛情に押されている感覚だった。
「すみません、実は、まだ気持ちが追いつかなくて……。自分が思っていたのと、結構色々と違っていたということでしょうか? それに驚いています」
衝撃を受けているという現在の胸の内を正直に明かした。
「ああ、わかってる。それに、そこまで思い込ませてしまったのは俺のせいだから」
雅之さんは切ない表情を浮かべながらも、誤解が解けたことに心から安堵しているように見えた。
しかし、次のひと言。
「俺だって、君が思い込んで、あんな騙し討ちみたいな誕生日を迎えていたら、大混乱していたよ」
安心したようにハハッと笑って話したそのひと言が、なぜか私の心の中のなんらかのスイッチを押した。
「思い込みって……騙し討ちって……」
その言葉の意味は、さっきまでの話でちゃんとわかっている。
意図していたことや本心も、この人にちゃんと伝わっていた。それもわかっている。
だけど、なぜか身体の奥から怒りと悲しみが湧き起こってくるのを感じてワナワナと震えていた。
そんな私の様子に気がついた雅之さんは、真っ青になりながら、
「わーっ、違う! 騙し討ちってのは、俺の本心を知っている者からすればそう見えるという言葉のあやだ。さっきも聞いていただろう!? でも、君がいじらしくも、ひたむきな思いからそうしようとしたのは、もう十分すぎるほど伝わっていると、何度も話に出てきたじゃないか」
相当に慌てた様子で、弁明を繰り返していた。
「さっ……紗雪!?」
クッションをはがしながら、雅之さんは目を白黒させていた。私のこの意味不明な行動に、彼が驚くのも無理はない。
「ごっ、ごめんなさい!」
慌てて謝罪したけれど、自分でも、自分のこの訳のわからない行動に驚いていた。
雅之さんの話はちゃんと聞いていた。理解もできたと思う。
(でも、気持ちがまだ追いつかない!!)
「いや、あの……。雅之さんのお話はよくわかったんですけど……」
「俺が愛してるのは紗雪だけで、穂乃花にはもう何もないことをわかってくれたか?」
(あっ……愛!?)
情熱のこもった言葉や表情、声を向けられて、思わずヒュッと息を吸い込んだ。
言われ慣れていない言葉を突然聞かされて、心は完全に動揺していた。
そして、手は再びクッションを探している有り様だった。
自分に向けられた告白が嬉しいのに、現実に気持ちの切り替えが追いつかないため、その愛情に押されている感覚だった。
「すみません、実は、まだ気持ちが追いつかなくて……。自分が思っていたのと、結構色々と違っていたということでしょうか? それに驚いています」
衝撃を受けているという現在の胸の内を正直に明かした。
「ああ、わかってる。それに、そこまで思い込ませてしまったのは俺のせいだから」
雅之さんは切ない表情を浮かべながらも、誤解が解けたことに心から安堵しているように見えた。
しかし、次のひと言。
「俺だって、君が思い込んで、あんな騙し討ちみたいな誕生日を迎えていたら、大混乱していたよ」
安心したようにハハッと笑って話したそのひと言が、なぜか私の心の中のなんらかのスイッチを押した。
「思い込みって……騙し討ちって……」
その言葉の意味は、さっきまでの話でちゃんとわかっている。
意図していたことや本心も、この人にちゃんと伝わっていた。それもわかっている。
だけど、なぜか身体の奥から怒りと悲しみが湧き起こってくるのを感じてワナワナと震えていた。
そんな私の様子に気がついた雅之さんは、真っ青になりながら、
「わーっ、違う! 騙し討ちってのは、俺の本心を知っている者からすればそう見えるという言葉のあやだ。さっきも聞いていただろう!? でも、君がいじらしくも、ひたむきな思いからそうしようとしたのは、もう十分すぎるほど伝わっていると、何度も話に出てきたじゃないか」
相当に慌てた様子で、弁明を繰り返していた。