叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.6 紗雪への感情 雅之side
この2年間、俺の時間は止まっていた。
止まったままで良かった。動かす気なんて微塵もなかった。
なのに、まさか自分から動き出す日が来るなんて思いもしなかった。
──ましてや、君を巻き込むことで動き出そうとするなんて……
穂乃花と別れてから1年ほどは両親も大人しかった。
さすがにあの時期に刺激したら暴れかねないと判断したんだろう。
それが去年の今頃の時期になると、連日のように縁談の話を持ってくるようになった。
一体どこから湧いて出てくるのかと思うほど。
両親は揃って人間不信。
父はかつての同僚に仕事で裏切られ、苦い経験をしたせいでそうなった。
母は人を見る目があるゆえに、その人間の裏側が見え過ぎてしまうからだ。
それゆえに、信用できそうな家の縁談相手を見つけてくるのも一苦労だろう。だが両親たちから手間を惜しんでいる様子は微塵も見えなかった。
兄は結婚しているのだし、何故そこまで躍起になって俺を結婚させたいのか理解不能だった。
だがどんなに押し付けられようとも完全スルーを決めていたら、ついには勝手に見合いの席がセッティングされるという事態になり、先方に対して丁重に断りを入れると……
「勝手に断るとは一体どんな了見だ! これで長年築いて来た信頼関係が壊れたらどうしてくれるんだ!」
親父が憤慨してきたので、こちらも当然対抗する。
「そっちが勝手に決めてくる限り、こっちは断固として永遠に断り続けるからな! 信頼関係壊されたくないなら、いい加減やめればいいだろう!」
まるで反抗期のような喧嘩の末、両親は勝手な見合いのセッティングだけは止めるようになった。
◇◇◇◇◇
──現在の2ヶ月前、紗雪と出会う約1ヶ月前──
「縁談相手の中に、もしかしたら運命の子がいるかもしれないじゃん」
会社の同期であり、大学時代からの親友である雨宮夕真が呆れた調子で言ってくる。
外回りの年始の挨拶ついでに早めの昼メシに出ようとしたところ、コイツも同じだったようで、メシを食いながら縁談へのぼやきを聞かせていた。
「いねーよ、そんなの。俺にはもういない。みんな同じに見える」
誰を見ても心が動くことなどなかった。
俺の心は、ただ1人を向いたまま凍結してる。
「そっかぁー。僕は、雅之に幸せになって欲しいんだけどな〜」
「余計なお世話だ、そんなもん。ほっといてくれ」
コイツは学生時代からずっと俺と穂乃花のことを知っている。もちろん親から猛反対されていた事も。
俺たちが別れた後、変に励ましたり、妙な同情をしてくるような事はなく、普段通りに接してきてくれた事はありがたいと感じていた。
ところがだ。
数ヶ月ほど前から妙なことばかり言い出すようになった。
「何処にどんなご縁が転がってるかわからないよ」
「今は何も目に入らないのはわかるけどさ。決めつけずに、ちょっと顔を上げてみるのもいいんじゃない?」
奇しくも、両親が縁談を押し付けてくるようになってきた少し後からだった。
……まさかコイツ、俺の説得をするようにウチの両親に買収されてやがるのか!?
止まったままで良かった。動かす気なんて微塵もなかった。
なのに、まさか自分から動き出す日が来るなんて思いもしなかった。
──ましてや、君を巻き込むことで動き出そうとするなんて……
穂乃花と別れてから1年ほどは両親も大人しかった。
さすがにあの時期に刺激したら暴れかねないと判断したんだろう。
それが去年の今頃の時期になると、連日のように縁談の話を持ってくるようになった。
一体どこから湧いて出てくるのかと思うほど。
両親は揃って人間不信。
父はかつての同僚に仕事で裏切られ、苦い経験をしたせいでそうなった。
母は人を見る目があるゆえに、その人間の裏側が見え過ぎてしまうからだ。
それゆえに、信用できそうな家の縁談相手を見つけてくるのも一苦労だろう。だが両親たちから手間を惜しんでいる様子は微塵も見えなかった。
兄は結婚しているのだし、何故そこまで躍起になって俺を結婚させたいのか理解不能だった。
だがどんなに押し付けられようとも完全スルーを決めていたら、ついには勝手に見合いの席がセッティングされるという事態になり、先方に対して丁重に断りを入れると……
「勝手に断るとは一体どんな了見だ! これで長年築いて来た信頼関係が壊れたらどうしてくれるんだ!」
親父が憤慨してきたので、こちらも当然対抗する。
「そっちが勝手に決めてくる限り、こっちは断固として永遠に断り続けるからな! 信頼関係壊されたくないなら、いい加減やめればいいだろう!」
まるで反抗期のような喧嘩の末、両親は勝手な見合いのセッティングだけは止めるようになった。
◇◇◇◇◇
──現在の2ヶ月前、紗雪と出会う約1ヶ月前──
「縁談相手の中に、もしかしたら運命の子がいるかもしれないじゃん」
会社の同期であり、大学時代からの親友である雨宮夕真が呆れた調子で言ってくる。
外回りの年始の挨拶ついでに早めの昼メシに出ようとしたところ、コイツも同じだったようで、メシを食いながら縁談へのぼやきを聞かせていた。
「いねーよ、そんなの。俺にはもういない。みんな同じに見える」
誰を見ても心が動くことなどなかった。
俺の心は、ただ1人を向いたまま凍結してる。
「そっかぁー。僕は、雅之に幸せになって欲しいんだけどな〜」
「余計なお世話だ、そんなもん。ほっといてくれ」
コイツは学生時代からずっと俺と穂乃花のことを知っている。もちろん親から猛反対されていた事も。
俺たちが別れた後、変に励ましたり、妙な同情をしてくるような事はなく、普段通りに接してきてくれた事はありがたいと感じていた。
ところがだ。
数ヶ月ほど前から妙なことばかり言い出すようになった。
「何処にどんなご縁が転がってるかわからないよ」
「今は何も目に入らないのはわかるけどさ。決めつけずに、ちょっと顔を上げてみるのもいいんじゃない?」
奇しくも、両親が縁談を押し付けてくるようになってきた少し後からだった。
……まさかコイツ、俺の説得をするようにウチの両親に買収されてやがるのか!?