叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.7 君のことばかり 雅之side
紗雪との婚約が決まったその日の晩、実家である三雲の屋敷で両親に報告した。
「プロポーズの承諾を貰いました。婚約します」
「で、誰なんだ?」
親父がハラハラした顔で聞いてくる。
「月名紗雪さんです」
「月名って……今取り掛かってる案件の!?」
「そうです」
「うん。それならば良し。あ〜〜良かったぁ〜!」
人間不信の親父は心底安心した様子で、ソファの背に寄りかかった。
親父は極端な話、風間家でなければ良いのだ。それ以外であれば、ある程度の信用が置けて、それなりの家の娘であれば文句は言われない。
風間家とは穂乃花の家だ。そしてその父親こそが我が父の人間不信の原因となった人物だった。
父が若かった頃の話で、仕事上での裏切りだった。正直、自分が親父だとしても絶対に許せないと思うような出来事だった。
それでも、俺としては穂乃花との件は別だと考えていた。だが当事者の気持ちを考えれば、それは甘い考えだったのかもしれない。
話は紗雪のことに戻る。
「言っておきますけど、キッカケは料亭買収の件ではありませんからね」
「じゃあ何なのさ」
「それは後ほど」
「なにーっ!?」
興味津々だった親父は心底不満そうだ。
「紗雪さんね。あらっ、雅之とお名前が似てるのね。ふふっ」
母がなんだかニコニコしていて怖い。
「雅之の表情を見れば、大体どんな子か想像がつくのよ」
母には一体何が見えると言うのか。
「"彼女といると何故か心が和む"と思っているでしょう?」
その通りだった。やはり母は侮れない。
実際、顔合わせで両親は紗雪のことをいたく気に入っていた。
彼女を家まで送り届けて再び戻った後も、両親は彼女が婚約者になったことをとても喜んでいた。
「皆で楽しい話が出来て良かったよ。雰囲気と言い、なんだか雅之に似合っている子だなぁと思ったな」
「私もお喋りしながらそう感じてたのよ」
紗雪本人も最初は心配になるほど緊張していたが、両親と仕事の話になると実に楽しそうに話していた。
ふんわりとした雰囲気なのに、話し出すとハキハキしてるところが意外性があり楽しい。
時々、前のめりになるところが実に愉快で、見ていて微笑ましくなる。
最初に両親からこれだけ好印象を持たれていれば、今後も2人で協力しながら実家と良い関係を築いていけるはず、と安心していた。
……つもりだった。
「プロポーズの承諾を貰いました。婚約します」
「で、誰なんだ?」
親父がハラハラした顔で聞いてくる。
「月名紗雪さんです」
「月名って……今取り掛かってる案件の!?」
「そうです」
「うん。それならば良し。あ〜〜良かったぁ〜!」
人間不信の親父は心底安心した様子で、ソファの背に寄りかかった。
親父は極端な話、風間家でなければ良いのだ。それ以外であれば、ある程度の信用が置けて、それなりの家の娘であれば文句は言われない。
風間家とは穂乃花の家だ。そしてその父親こそが我が父の人間不信の原因となった人物だった。
父が若かった頃の話で、仕事上での裏切りだった。正直、自分が親父だとしても絶対に許せないと思うような出来事だった。
それでも、俺としては穂乃花との件は別だと考えていた。だが当事者の気持ちを考えれば、それは甘い考えだったのかもしれない。
話は紗雪のことに戻る。
「言っておきますけど、キッカケは料亭買収の件ではありませんからね」
「じゃあ何なのさ」
「それは後ほど」
「なにーっ!?」
興味津々だった親父は心底不満そうだ。
「紗雪さんね。あらっ、雅之とお名前が似てるのね。ふふっ」
母がなんだかニコニコしていて怖い。
「雅之の表情を見れば、大体どんな子か想像がつくのよ」
母には一体何が見えると言うのか。
「"彼女といると何故か心が和む"と思っているでしょう?」
その通りだった。やはり母は侮れない。
実際、顔合わせで両親は紗雪のことをいたく気に入っていた。
彼女を家まで送り届けて再び戻った後も、両親は彼女が婚約者になったことをとても喜んでいた。
「皆で楽しい話が出来て良かったよ。雰囲気と言い、なんだか雅之に似合っている子だなぁと思ったな」
「私もお喋りしながらそう感じてたのよ」
紗雪本人も最初は心配になるほど緊張していたが、両親と仕事の話になると実に楽しそうに話していた。
ふんわりとした雰囲気なのに、話し出すとハキハキしてるところが意外性があり楽しい。
時々、前のめりになるところが実に愉快で、見ていて微笑ましくなる。
最初に両親からこれだけ好印象を持たれていれば、今後も2人で協力しながら実家と良い関係を築いていけるはず、と安心していた。
……つもりだった。