叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.14 彼のことになると
再び「料亭月名」の小座敷で、今度は妹の六花と和成くんの2人と対峙している。
「和成くん、業務時間中に大丈夫なの?」
「今日は午前中が外回りで、まだ昼休憩を取っていないから丁度良かった」
「そうなんだ……」
隙のない回答が戻ってきて、もはや逃げ場はなかった。
そして和成くんは持って来ていた紙袋を差し出すと、
「これはウチのカフェの新商品なんだ。紗雪ちゃんと月名さんの2人でどうぞと思って」
「わあ、ありがとうございます」
六花はそれをちゃっかりと受け取ると、
「ほら、お姉ちゃん。期間限定の旬のフルーツのやつだよ」
満面の笑みを浮かべながら、新商品の説明をしてくれた。
ちなみに、六花によると、昨日のうちに本人のポケットマネーで用意してくれていたらしい。
現在、六花はAMOCCに新卒で入社して半年。学生時代のデザインソフトの使用経験を見込まれて、インテリアデザイン事業部に仮所属となったため、和成くんは直属の上司になったそうだ。
「では、課長も良かったら昼食にどうぞ」
六花はそう言うと、個包装になったカフェの季節限定のドーナツやフィナンシェと共にお茶を差し出した。
「では、本題に入ろう」
お茶を啜った後、和成くんは取り調べを始めることを宣言し、妹はそれに賛同した。
「お姉ちゃん、さっきの女性は誰?」
早速のところ、その質問を投げかけて来た。
妹は何も知らないので、和成くんに向けて「言わないで」というアイコンタクトとテレパシーを送った。
和成くんの方は穂乃花さんが雅之さんの元恋人であるという情報が先程彼の中で一致したが、雅之さんの事情についてはもちろん知らない。
「さっきの人は風間さんと言って、私の友人なのです」
妹に対し、非常に堅苦しい口調の回答になってしまった。
「ふーーん」
妹は怪しむような視線を送ってくると、
「じゃあ、その風間さんが言ってた、お義兄さんとの事をお願いというのはどういうこと?」
ズバリそこに切り込んできた。ちなみに、お義兄さんとは雅之さんの事である。
つまり、尋問されているのは私だが、言うなれば、この取り調べは雅之さんに対してのものなのだ。
「それは……そう、仕事で雅……三雲さんを紹介して欲しいと言われまして、それでは三雲さんに確認してみますと返事をしたところです」
やはりギクシャクとした話し方になってしまう。
「でも、あの人、雅之って呼び捨てだったけど?」
「どうやら学生時代のお知り合いのようで、ところが仕事では縁がなかったみたいで……」
「あー、もう、まどろっこしいなぁ。あの人、そういう感じじゃなかったよ? ちゃんと本当のことを話してよ!」
短気な妹の堪忍袋の緒は、話している途中で切れてしまった。でも、それは私を心配してくれているからなのはわかっている。
「さっきの女性は、風間穂乃花。ホテル・シーズナルウィンドの風間社長の娘であり、三雲さんの元彼女だ」
口を開いた和成くんの説明に妹は黙り、座敷の中に静けさがこだました。
妹に心配かけさせたくないから話せない。それもあった。
でも1番は、雅之さんと穂乃花さんが再会することを誰にも知られたくなかったから。
知られてしまえば、三雲のお義父様や風間社長に妨害されてしまうかもしれない。
そうなる前に再会を急いだら、私と雅之さんのお別れが早まってしまうから。
私の、そんな自分勝手な理由からだった。
「和成くん、業務時間中に大丈夫なの?」
「今日は午前中が外回りで、まだ昼休憩を取っていないから丁度良かった」
「そうなんだ……」
隙のない回答が戻ってきて、もはや逃げ場はなかった。
そして和成くんは持って来ていた紙袋を差し出すと、
「これはウチのカフェの新商品なんだ。紗雪ちゃんと月名さんの2人でどうぞと思って」
「わあ、ありがとうございます」
六花はそれをちゃっかりと受け取ると、
「ほら、お姉ちゃん。期間限定の旬のフルーツのやつだよ」
満面の笑みを浮かべながら、新商品の説明をしてくれた。
ちなみに、六花によると、昨日のうちに本人のポケットマネーで用意してくれていたらしい。
現在、六花はAMOCCに新卒で入社して半年。学生時代のデザインソフトの使用経験を見込まれて、インテリアデザイン事業部に仮所属となったため、和成くんは直属の上司になったそうだ。
「では、課長も良かったら昼食にどうぞ」
六花はそう言うと、個包装になったカフェの季節限定のドーナツやフィナンシェと共にお茶を差し出した。
「では、本題に入ろう」
お茶を啜った後、和成くんは取り調べを始めることを宣言し、妹はそれに賛同した。
「お姉ちゃん、さっきの女性は誰?」
早速のところ、その質問を投げかけて来た。
妹は何も知らないので、和成くんに向けて「言わないで」というアイコンタクトとテレパシーを送った。
和成くんの方は穂乃花さんが雅之さんの元恋人であるという情報が先程彼の中で一致したが、雅之さんの事情についてはもちろん知らない。
「さっきの人は風間さんと言って、私の友人なのです」
妹に対し、非常に堅苦しい口調の回答になってしまった。
「ふーーん」
妹は怪しむような視線を送ってくると、
「じゃあ、その風間さんが言ってた、お義兄さんとの事をお願いというのはどういうこと?」
ズバリそこに切り込んできた。ちなみに、お義兄さんとは雅之さんの事である。
つまり、尋問されているのは私だが、言うなれば、この取り調べは雅之さんに対してのものなのだ。
「それは……そう、仕事で雅……三雲さんを紹介して欲しいと言われまして、それでは三雲さんに確認してみますと返事をしたところです」
やはりギクシャクとした話し方になってしまう。
「でも、あの人、雅之って呼び捨てだったけど?」
「どうやら学生時代のお知り合いのようで、ところが仕事では縁がなかったみたいで……」
「あー、もう、まどろっこしいなぁ。あの人、そういう感じじゃなかったよ? ちゃんと本当のことを話してよ!」
短気な妹の堪忍袋の緒は、話している途中で切れてしまった。でも、それは私を心配してくれているからなのはわかっている。
「さっきの女性は、風間穂乃花。ホテル・シーズナルウィンドの風間社長の娘であり、三雲さんの元彼女だ」
口を開いた和成くんの説明に妹は黙り、座敷の中に静けさがこだました。
妹に心配かけさせたくないから話せない。それもあった。
でも1番は、雅之さんと穂乃花さんが再会することを誰にも知られたくなかったから。
知られてしまえば、三雲のお義父様や風間社長に妨害されてしまうかもしれない。
そうなる前に再会を急いだら、私と雅之さんのお別れが早まってしまうから。
私の、そんな自分勝手な理由からだった。