叶わぬ彼との1年先の縁結び
ep.15 さよならまでの1ヶ月
「誕生日? 俺の?」
まるで想定もしていなかったように、雅之さんは珍しくもキョトンとした顔をしていた。
「そうです、雅之さんのお誕生日です」
「そっかぁ」
再び伝えると、彼は照れくさそうな表情を浮かべながらつぶやいた。その声はどこか嬉しそうに聞こえた。
朝食の席で、来月末の誕生日のことを切り出しているところだった。
「ここでパーティーを?」
「はい、2人だけなのでパーティーと言って良いのかわかりませんが。準備は私がしますので」
再び驚いた様子で尋ねてきた雅之さんに対してそう答えると、
「いや、むしろ2人きりが嬉しいから。でもどこかお店でなくて良いのか? 準備をするのは大変だろう?」
彼は私を労って、どこでも好きなお店を予約すると提案してくれた。
「いえ、大したものは準備出来ませんが、私がそうしたいので……」
「じゃあ、宜しく頼んだ。プレゼントは、紗雪がパーティーの準備してくれるので充分だからな」
彼は嬉しそうな顔をして、気遣いまでしてくれていた。
2人でのパーティーを楽しみにしてくれている様子を見て、なぜかチクリと胸が痛むのを感じた。
(この人には、その後もっと嬉しいことが待っているんだから……)
この胸の痛みは、ここを去るのが辛いからだ。2人で過ごすのを楽しみにしてくれている事に対してじゃないから。本来ならすぐに会わせてあげられるのを猶予してもらっている罪悪感からだから。
心の中で自分に対して必死にそう言い聞かせていた。
まるで想定もしていなかったように、雅之さんは珍しくもキョトンとした顔をしていた。
「そうです、雅之さんのお誕生日です」
「そっかぁ」
再び伝えると、彼は照れくさそうな表情を浮かべながらつぶやいた。その声はどこか嬉しそうに聞こえた。
朝食の席で、来月末の誕生日のことを切り出しているところだった。
「ここでパーティーを?」
「はい、2人だけなのでパーティーと言って良いのかわかりませんが。準備は私がしますので」
再び驚いた様子で尋ねてきた雅之さんに対してそう答えると、
「いや、むしろ2人きりが嬉しいから。でもどこかお店でなくて良いのか? 準備をするのは大変だろう?」
彼は私を労って、どこでも好きなお店を予約すると提案してくれた。
「いえ、大したものは準備出来ませんが、私がそうしたいので……」
「じゃあ、宜しく頼んだ。プレゼントは、紗雪がパーティーの準備してくれるので充分だからな」
彼は嬉しそうな顔をして、気遣いまでしてくれていた。
2人でのパーティーを楽しみにしてくれている様子を見て、なぜかチクリと胸が痛むのを感じた。
(この人には、その後もっと嬉しいことが待っているんだから……)
この胸の痛みは、ここを去るのが辛いからだ。2人で過ごすのを楽しみにしてくれている事に対してじゃないから。本来ならすぐに会わせてあげられるのを猶予してもらっている罪悪感からだから。
心の中で自分に対して必死にそう言い聞かせていた。