保健室の"お姫様"

見つけられた日



先生が出張に行った午後。

カーテンを開き、目を細める。

私は勉強していた手を止めて窓に目をやった。

私はただでさえみんなと同じ空間で勉強できている訳じゃないし、少しでも追いつくためにやらないと…。

保健室から見える中庭では小鳥が飛んでいて、咲き乱れる花に思わず微笑んでしまう。

綺麗なお花だなぁ…。

ガーベラやバラ…、あ、あの鳥、なんだろう…っ。

なんて思っていると、鳥が一斉に飛び立った。

な、なにっ…?

がらがらがらっ。

保健室の扉が開いて、綺麗な男の子が姿を現す。

わっ…。

白寄りの金髪が綺麗っ…。

「失礼します。3年A組、白石美鈴(しらいしみすず)です。って…」

そこまで言って、私に目を向けた彼。

私の姿を見た瞬間大きく目を見開いた。

「…保健室の、お姫様…?」

その呼び名に、体が硬直する。

「保健室のお姫様」っていうのは私の通り名で、きっと姫崎の姫から取られたんだろうけど…、"姫"は詐欺に近いんじゃないかなっ…。

1人でそんなことを思っていると、扉の前に立っていた男の子がこちらに歩み寄ってくる。

えっ…?

私の前で立ち止まり、 いきなり手を握られた。

「姫崎結愛ちゃん…、だよね。」

"ずっと会いたかった。"

そう言われて、記憶を辿る。

この人…私とは初対面、だよね…っ?

「え、えっと、ごめんなさいっ。どこかで会ったことありましたか…?」

「ううん。無いよ。俺が一方的に覚えてるだけだから。」

綺麗な微笑みを浮かべ、愛おしそうな瞳を向けられてドキッとする。

日頃からあまり、イケメンとか、美女とか意識したことは無かったけれど、この人は綺麗な顔立ち…。

「姫崎さん、いつもここのベッドにいるの?」

そう聞かれて、

「は、はいっ。定位置なんです…!」

と答える。

優しい口調で話しやすいなぁ…。

「じゃあ、僕がここに来たらいつも会える?」

上目遣いで見つめてくる彼。

…あれ?

どこかで見た事ある気が…。

「だめ…?」

考える間もなく、うるうるした瞳で私を見つめられて、思わず首を横に振ってしまう。

「だめじゃないです…っ。」

「ほんと?やった」

はにかむように笑えば、戸棚に向かって歩いていく男の子。

「絆創膏ってどこかな…。」

独り言のように呟く。

あ、私…わかる…っ。

「ここ、です…!」

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