策士の優男はどうしても湯田中さんを落としたい
瑠璃の手を優しく握ったまま、祐はゆっくりその手の甲に唇を落とした。

「守るって言ったら、重いですか?」

囁くような声。柔らかくて、でも芯があるその言葉に、瑠璃の心はじんわりと熱を帯びていく。

「……重くなんか、ない」

小さな声で、瑠璃が答えた。

「ほんとに?」

祐の目が優しく揺れている。甘い空気の中に、少しだけ切なさがにじんでいた。

瑠璃はうなずいた。

「うん」

その瞬間、祐の顔がゆっくりと近づく。唇が触れる直前で、一度瑠璃の目を見て、確かめるように止まった。

「していいですか?」

「……バカ」

瑠璃が顔をそらすように言ったが、その耳は真っ赤だった。

祐は小さく笑って、そっと唇を重ねた。

最初は優しく、確かめるようなキス。けれど、瑠璃が目を閉じて祐の首に手を添えた瞬間、キスは少しずつ深くなっていく。

祐の腕が瑠璃の背を支える。その仕草があまりにも丁寧で、瑠璃の心はとろけるように溶けていった。

「好きです」

囁かれる声が、耳元で震える。

「……私も、ちょっとだけ好きになってるかも」

「ちょっとじゃ足りません」

くすぐったいほどの甘さが、二人を包んだ。

この夜、瑠璃の心には祐という存在が、確かに刻まれた。
今この瞬間だけは、瑠璃も、祐に「甘える」という選択肢を選んでいた。
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