組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
きっと芽生のすぐ横にいる相良京介は、細波母子がしてきた全てのことを知っているはずだ。
堅気ではない彼らの手にそんな二人の命運が委ねられているというのなら、自分は秘密裏にでも相良京介が属する団体をバックアップしようではないか。
そんなことを考えていたら、今まで想い詰めたように押し黙っていた芽生が、ポツンとこぼした。
「沙奈さんは……赤ちゃんのこと、要らないって思ったんでしょうか」
その言葉に栄蔵は思わずと言った具合に芽生を見詰めて、「そんなことはない!」と即座に否定した。
「でも……沙奈さんはきっと、ひとりで子供を産み育てることを不安に感じていたんですよね? だから安全に産めるはずの産院ではなく、私的に出産することを選んだんじゃ? そうすれば赤ちゃんだけじゃなく、沙奈さん自身の命も危険にさらされます。なんだかまるで、赤ちゃんと一緒に死にたがっていたみたいじゃないですか」
芽生は、自分が親から望まれてこの世に生を受けたんじゃないと感じて苦しんでいるようだった。
「でも結局二人とも死ねなかったから、私だけ助かるよう手配して自分だけ栄一郎さんの元へ……」
消え入りそうな声音でそうつぶやいてうつむいた芽生に、栄蔵は適切な言葉を見つけられないままに口籠る。
そんな栄蔵を見かねたんだろうか。京介が口を開いた。
「なぁ芽生よ。俺にゃー子供を産んだ母親の気持ちなんざ少しも分かんねぇがな、わざわざ赤ん坊の身内がいるこの街へ生まれたてのガキぃ連れてきて孤児院へ捨てて行く意味が分かんねぇわ。普通に考えてここまで出向いてきたんなら、何が何でも爺さんの所へ乗り込んで、恨み節のひとつでもぶちまけてから赤子、押し付けていくだろーがよ」
――そうなっていないのなら、へその緒も外れていないような芽生をこの街に連れてきたのは産後すぐの沙奈ではないし、ましてや捨てたのだって彼女じゃない。
言外へそう含めた京介に、芽生が泣きそうな顔をする。
「私、《《お母さん》》に……捨てられたんじゃ、ない?」
芽生の言葉に、栄蔵がゆっくりと頷いて、京介も「当たり前だろ」と太鼓判を捺す。
「お前自身位は死んだ両親と、そこへいる爺さんや、遠くにいる婆さんからクソほど愛されてるって胸張っとけや。本来なら生まれた時からずっと受けられるはずだったそういうモンをお前から引き剥がしたのは、親父さんやお袋さんの命を奪った人間と同一だ。だからな、芽生。馬鹿どもに踊らされて家族の愛情とかそういうのだけは疑ってやんな。――な?」
そこで京介に抱き寄せられた芽生は、「うん、うん……」と何度も頷きながら、ポロポロと温かな涙を落とした。
堅気ではない彼らの手にそんな二人の命運が委ねられているというのなら、自分は秘密裏にでも相良京介が属する団体をバックアップしようではないか。
そんなことを考えていたら、今まで想い詰めたように押し黙っていた芽生が、ポツンとこぼした。
「沙奈さんは……赤ちゃんのこと、要らないって思ったんでしょうか」
その言葉に栄蔵は思わずと言った具合に芽生を見詰めて、「そんなことはない!」と即座に否定した。
「でも……沙奈さんはきっと、ひとりで子供を産み育てることを不安に感じていたんですよね? だから安全に産めるはずの産院ではなく、私的に出産することを選んだんじゃ? そうすれば赤ちゃんだけじゃなく、沙奈さん自身の命も危険にさらされます。なんだかまるで、赤ちゃんと一緒に死にたがっていたみたいじゃないですか」
芽生は、自分が親から望まれてこの世に生を受けたんじゃないと感じて苦しんでいるようだった。
「でも結局二人とも死ねなかったから、私だけ助かるよう手配して自分だけ栄一郎さんの元へ……」
消え入りそうな声音でそうつぶやいてうつむいた芽生に、栄蔵は適切な言葉を見つけられないままに口籠る。
そんな栄蔵を見かねたんだろうか。京介が口を開いた。
「なぁ芽生よ。俺にゃー子供を産んだ母親の気持ちなんざ少しも分かんねぇがな、わざわざ赤ん坊の身内がいるこの街へ生まれたてのガキぃ連れてきて孤児院へ捨てて行く意味が分かんねぇわ。普通に考えてここまで出向いてきたんなら、何が何でも爺さんの所へ乗り込んで、恨み節のひとつでもぶちまけてから赤子、押し付けていくだろーがよ」
――そうなっていないのなら、へその緒も外れていないような芽生をこの街に連れてきたのは産後すぐの沙奈ではないし、ましてや捨てたのだって彼女じゃない。
言外へそう含めた京介に、芽生が泣きそうな顔をする。
「私、《《お母さん》》に……捨てられたんじゃ、ない?」
芽生の言葉に、栄蔵がゆっくりと頷いて、京介も「当たり前だろ」と太鼓判を捺す。
「お前自身位は死んだ両親と、そこへいる爺さんや、遠くにいる婆さんからクソほど愛されてるって胸張っとけや。本来なら生まれた時からずっと受けられるはずだったそういうモンをお前から引き剥がしたのは、親父さんやお袋さんの命を奪った人間と同一だ。だからな、芽生。馬鹿どもに踊らされて家族の愛情とかそういうのだけは疑ってやんな。――な?」
そこで京介に抱き寄せられた芽生は、「うん、うん……」と何度も頷きながら、ポロポロと温かな涙を落とした。