組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
芽生が不安に眉根を寄せるのを見て、京介が「ま、起こってもねぇーこと気にしてビクビクすんなや」と芽生の頭を撫でてくるから、(そう言えば彼はこういう人だった)と心の中、小さく吐息を落とした芽生である。
「氷枕とか作って来てやるからとりあえず目ぇつぶっとけ」
この話は以上! 終了だ、とばかりにスッと立ち上がった京介を見上げながら、芽生はせめても……と思って布団を引き上げて口元を覆った。
***
頭をそっと持ち上げられてひんやりしたものを首筋に宛がわれた感触にゆるゆると重い瞼を持ち上げれば、すぐそば。芽生の上へ屈みこむようにして頭の下へ氷枕を差し込んでくれている最中の京介と目があった。
「すまん。起こしちまったか」
京介の言葉に慌てて布団で口元を覆い直すと、芽生は「大丈夫」とつぶやいた。
そうしておいて、京介がそばにいてくれることに安堵しつつ、うつしてしまうかも? というものとは別の問題が鎌首をもたげて不安になる。
だって、今日は確か平日なのだ。京介は仕事へ行かなくてもいいんだろうか?
力なく彼の名を呼んで「お仕、事、は……?」と眉根を寄せれば、「あ? んなこと心配してんのか」と京介に呆れ顔をされてしまう。
(でも京ちゃんは確か相良組の組長さんで、葛西組の若頭さんなんでしょう?)
芽生にはそちらの世界のことはよく分からないけれど、目の前の男が上の方の人、というのは何となく理解している。
そんな京介が不在のままで、組織は回るんだろうか?
(年末だし、忙しかったりするんじゃないのかな?)
芽生がかつて勤めていたファミリーレストラン『カムカム』は年末になって企業勤めの方々が仕事納めを迎えると、いつもより若干暇になっていた。年始はいつもと客層が変わってちょっぴり忙しくなるけれど、まぁそれも少しだけ程度で、余りそういう感覚はなかった。でも一般的な企業なんかだと、年末年始は長期休みがある分、大変なイメージだ。
極道が一般的な仕事かどうかは一旦保留にしておいて、芽生はそんなことを考える。
現に、『長谷川建設』では年末までに、『ここまでは済ませておきたいこと進行』みたいなものがあった。
午前中、ワオンモールへ出向いた上、病院にまで付き添ってもらってしまったけれど、大丈夫なんだろうか?
京介の言葉にコクコクと首肯したら、頭がずきりと痛んだ。その反動に眉根を寄せたら、京介に「大丈夫か?」と心配されてしまった。
そんな京介に、「大丈夫」と答えながらも、芽生は京介のことが気になって仕方がない。
「ホント、お前は……。そんなに仕事のことが気になるか?」
真面目過ぎんだろ、と盛大な溜め息とともにそう問い掛けられた芽生は、「だって……」とつぶやいた。
大好きな人が大切にしている人たちや、それに絡んだお仕事のことを気にしないでいられるわけがない。
なのにどうやら京介は、芽生が自分自身の仕事のことを気にしていると勘違いしたらしい。
「心配すんな。長谷川にゃぁ、さっき、しばらくインフルで休ませてもらうって連絡しておいたから。この時期だ。そのまま年末年始の休みに突入しちまうだろうから、仕事のことは気にせずしっかり身体を休めろってよ」
そこでふっと口角を緩めた京介が、「そーいやぁ、静月ちゃんと一緒に見舞いへ来たいって言われたぞ?」と芽生を見つめてくる。
その言葉に、芽生は瞳を見開いた。
「氷枕とか作って来てやるからとりあえず目ぇつぶっとけ」
この話は以上! 終了だ、とばかりにスッと立ち上がった京介を見上げながら、芽生はせめても……と思って布団を引き上げて口元を覆った。
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頭をそっと持ち上げられてひんやりしたものを首筋に宛がわれた感触にゆるゆると重い瞼を持ち上げれば、すぐそば。芽生の上へ屈みこむようにして頭の下へ氷枕を差し込んでくれている最中の京介と目があった。
「すまん。起こしちまったか」
京介の言葉に慌てて布団で口元を覆い直すと、芽生は「大丈夫」とつぶやいた。
そうしておいて、京介がそばにいてくれることに安堵しつつ、うつしてしまうかも? というものとは別の問題が鎌首をもたげて不安になる。
だって、今日は確か平日なのだ。京介は仕事へ行かなくてもいいんだろうか?
力なく彼の名を呼んで「お仕、事、は……?」と眉根を寄せれば、「あ? んなこと心配してんのか」と京介に呆れ顔をされてしまう。
(でも京ちゃんは確か相良組の組長さんで、葛西組の若頭さんなんでしょう?)
芽生にはそちらの世界のことはよく分からないけれど、目の前の男が上の方の人、というのは何となく理解している。
そんな京介が不在のままで、組織は回るんだろうか?
(年末だし、忙しかったりするんじゃないのかな?)
芽生がかつて勤めていたファミリーレストラン『カムカム』は年末になって企業勤めの方々が仕事納めを迎えると、いつもより若干暇になっていた。年始はいつもと客層が変わってちょっぴり忙しくなるけれど、まぁそれも少しだけ程度で、余りそういう感覚はなかった。でも一般的な企業なんかだと、年末年始は長期休みがある分、大変なイメージだ。
極道が一般的な仕事かどうかは一旦保留にしておいて、芽生はそんなことを考える。
現に、『長谷川建設』では年末までに、『ここまでは済ませておきたいこと進行』みたいなものがあった。
午前中、ワオンモールへ出向いた上、病院にまで付き添ってもらってしまったけれど、大丈夫なんだろうか?
京介の言葉にコクコクと首肯したら、頭がずきりと痛んだ。その反動に眉根を寄せたら、京介に「大丈夫か?」と心配されてしまった。
そんな京介に、「大丈夫」と答えながらも、芽生は京介のことが気になって仕方がない。
「ホント、お前は……。そんなに仕事のことが気になるか?」
真面目過ぎんだろ、と盛大な溜め息とともにそう問い掛けられた芽生は、「だって……」とつぶやいた。
大好きな人が大切にしている人たちや、それに絡んだお仕事のことを気にしないでいられるわけがない。
なのにどうやら京介は、芽生が自分自身の仕事のことを気にしていると勘違いしたらしい。
「心配すんな。長谷川にゃぁ、さっき、しばらくインフルで休ませてもらうって連絡しておいたから。この時期だ。そのまま年末年始の休みに突入しちまうだろうから、仕事のことは気にせずしっかり身体を休めろってよ」
そこでふっと口角を緩めた京介が、「そーいやぁ、静月ちゃんと一緒に見舞いへ来たいって言われたぞ?」と芽生を見つめてくる。
その言葉に、芽生は瞳を見開いた。