永遠の約束を交わそう
夜。


兵舎を抜け出して裏庭へ歩く。


基地の隙間から来る潮風は湿って重い。


月が俺を照らした。


そこで立ち止まり、拳を固く握りしめる。


本当は、死にたくない。


本当は、彼女の隣で、もっと会話をしていたい。


しかしその思いを口にすることはできない。


仲間も、家族も、自分も。


命を賭して『国のため』に飛び立たねばならない。


揺らいではならない。


それがこの時代に生まれた、自分に課せられた使命だと分かっている。


けれど、美緒の涙を思い出すと、その使命の重みが耐え難いほど苦しくなった。


「…俺は、ずるいな」


誰にともなく吐き出した声が、潮風にさらわれて消えていく。



 
 
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