あこがれドレス ~地味子な私がプリンセス♪
朝の昇降口で、教室の前で、帰り道で。

いつも唐突に現れては「姫、今日もかわいいな」とか
「隠すなよ、その笑顔」とか、真顔で言ってくる。

「や、やめてください! からかってるんでしょう?」

「からかうかよ。俺がそんな軽い男に見えるか?」

「……十分、見えます」

「おいおい、失礼だな。俺は本気だ」

強引で、俺様で。

最初はただ困らされているだけのはずだった。

でもある日、雨に降られて困っていたとき、彼が無言で傘を差し出してくれた。

「風邪ひくぞ。お前が濡れたら嫌だから」

その声は驚くほど優しくて、野獣なんかじゃなく、本物の王子さまのように思えた。

胸の奥がじんわりと熱くなる。

――やっぱり、私には眩しすぎる。

そう思いながらも、差し出された傘を受け取る手は震えていた。

彼は満足そうに笑い、ささやいた。

「姫。俺から逃げても無駄だぞ。
だって、お前は俺の一番大事な人になるんだから」

強引で、でも嘘のないその瞳に、私は何も言い返せなかった。

野獣だと思っていた彼は、気づけば――
私を溺愛する、優しい王子さまになっていた。
< 11 / 12 >

この作品をシェア

pagetop