あこがれドレス ~地味子な私がプリンセス♪
私の日常は、誰にも知られることなく、静かに流れていく。
まるで、音のしない小川のように。
そんなささやかな日々に、大きな波が立つ日がやってきた。
文化祭の準備が始まった。
校舎全体が、熱気に包まれていく。
廊下のあちこちでクラスの出し物の企画書が貼られ、部活動棟からは賑やかな声が響く。
私はといえば、その喧騒から少し離れた場所にいた。
名前だけ手芸部に籍を置いていた私は、特にやることもないだろうと思っていた。
しかし今年は少し様子が違うらしい。
演劇部、写真部、そして手芸部の三つの部活が、力を合わせて一つの大きな企画を動かすという。
童話をテーマにした写真展。
ただ写真を並べるだけではなく、本格的な演劇を演じ、その様子を撮影して展示するという。
舞台美術も衣装も、すべてが本物さながら。
その壮大な計画の主役は、もちろん「お姫様」だ。
その役は、全校生徒の憧れの的、モデルのように華やかな美咲先輩に決まった。
誰もが「やっぱり!」と口を揃え、私も心の中で深く頷いた。
「美咲ちゃんが姫なら、王子役は誰だろうね?」
そんな無邪気な声が、準備作業で忙しい教室のあちこちから聞こえてくる。
私はその賑わいから距離を置き、画用紙を黙々と切り続けていた。
華やかな舞台なんて、自分には縁がない。裏方で十分だ。
華やかな舞台なんて、自分とは無縁だと思っていた…、
あの出来事が起こるまでは……?!