【失恋同盟】



上目遣いのこの顔が、苦手。



「俺、急いでるんだけど」


「なんで?帰るだけでしょ?」



いや。空き教室で、篠原が待ってるんだって。

そんなこと、言えるわけもない。

はあー、と今度は大きなため息。
掴まれた右手は、もう熱を帯びることなく…ずっと冷たいまま。



「手、放して」


「…あ、ごめん」



パッと離された手。
その瞬間、空気がすっと冷えた気がした。


無視して行こうかと思ったとき―― ポケットのスマホから、LINEの通知音。



<佐成くん、ごめん!お母さんから買い物頼まれちゃって、先帰るね!



謝ってるうさぎのスタンプ。
その画面を見た瞬間、 胸の奥がぐっと重くなる。


あー。最悪。
今、最高に機嫌悪いかも。


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