【失恋同盟】



佐成くん。
私、佐成くんのことが好き。


佐成くんが心配そうに私の顔を覗き込む。



「ほんとは、まだ高瀬のこと忘れられてない?」


「そう、かも…」



嘘。だけど、そう言ったら――



「篠原、おいで」



佐成くんが私の腕を引いて、ぎゅっと抱きしめてくれる。

久しぶりの佐成くんの匂い。
大きな背中に、そっと手を回す。

好き。ほんとは、ずっとこうしていたい。

でも―― 佐成くんには、気になる人がいるって言ってた。

だから、もう全部終わらせる。

この気持ちも、 このぬくもりも、今日で最後にする。



だから、お願い。

今だけは、抱きしめさせて。


< 216 / 286 >

この作品をシェア

pagetop