【失恋同盟】
でも、俺が篠原と仲良くなったのって―― 高瀬がいたからなんだよね。
篠原が高瀬に失恋してなかったら、そもそも話すことすらなかったと思うし。
「じゃあな佐成」
「じゃあね」
高瀬に、少しだけ感謝しつつ。
今は、綺麗なただの教室となってる部屋を横目に歩き出す。
「佐成くんっ!」
振り返ると、息を切らしながら走ってくる篠原。
「どうしたの?」
「佐成くんが見えたからっ…」
「だから、走ってきたの?」
かわいい笑顔で、「うん」って答える篠原。
その一言に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
抱きしめたい。
この笑顔ごと、全部、俺の腕の中に閉じ込めたくなる。