令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
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店を出ると、芙美は思わず項垂れた。通りを歩く観光客の笑い声が、どこか遠くに感じられる。
「ごめんなさい……私、ほんとにドジで……あとでお金返します」
情けなさがこみ上げ、声が震えてしまう。せっかくの楽しい時間を、自分の不注意で壊してしまった気がして、涙がにじみそうになる。
だが、侑は立ち止まり、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「君に怪我がなくてよかったよ。それに物は直せないけど、気持ちは直せる。ほら、俺は今、こうして芙美が隣にいることのほうが大事だから」
その一言に、芙美の胸の奥がじんわりと熱くなった。侑の声には、迷いのない誠実さが宿り、彼女の心にあった重い雲が、まるで風に吹かれるように溶けていった。