令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
展示を見終わり、二人は公民館の出口に向かった。外に出ると、夕暮れの空が街をオレンジ色に染めていた。遠くの地平線に沈む太陽が、柔らかな光を投げかけ、通りを歩く人々の影を長く伸ばしている。芙美と侑は並んで歩き始めた。街灯が点り始め、夜の気配が静かに忍び寄る中、二人の距離は自然と近くなっていた。肩が触れそうで触れない、絶妙な距離。それが、芙美の心を軽くざわめかせた。
「今日も、楽しかったです」
芙美の声には、自然な温かさと、ほのかな期待が混じっていた。彼女自身、その言葉を口にした瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「僕もです。芙美さんといると、なんだか時間があっという間ですね」
侑の目が、ほんのわずかに優しく細められた。その笑顔に、芙美の心はまた小さく跳ねた。侑の言葉は、まるで彼女の心にそっと触れるように響いた。この人と過ごす時間が、こんなにも心地いいのだ――その実感が、芙美の胸に静かな喜びを灯した。