令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
帰り道、芙美はふと足を止め、夕暮れの空を見上げた。夕日のオレンジが街を染め、街路樹の葉がそよ風に揺れる。長い影が、二人を優しく包み込んでいた。
「今日は、いろいろ話せてよかったです」
芙美が小さく呟くと、侑は軽く微笑んで答えた。
「僕もです。芙美さんのこと、もっと知りたいと思いました」
その言葉に、芙美の心の奥がじんわりと温かくなった。彼女は、侑の手を自然に握り返した。言葉以上に、互いの存在が心を満たしていた。
家に帰った芙美は、ベランダから夜空を見上げた。都会の光に少し霞む星々が、静かに瞬いている。今日の出来事を思い返しながら、胸の奥に確かな温かさが広がった。図書館での静かな時間、カフェでの会話、夕暮れの道を並んで歩いた瞬間。それらが、まるで心のキャンバスに鮮やかな色を塗るように、彼女を満たしていた。
――侑さんなら、私の過去も、価値観も、全部受け入れてもらえる。
その思いが、芙美の心に確かな根を下ろしていた。
同じ空の下、侑もホテルの窓辺で、コーヒーカップを手に夜空を見上げていた。芙美の笑顔、彼女の話す過去や価値観が、頭に浮かぶ。この時間が、まるで新しいデザインのスケッチのように、彼の心に鮮やかに描かれていた。
――芙美さんとの時間が、こんなにも特別だなんて。
静かな日常の中で、二人の関係は確実に深まり、互いの心を重ねていく――そんな一日の終わり。