残念令嬢、今世は魔法師になる

18、前世の実家を訪れた日

 あっという間にリベラのお茶会の日がやって来た。
 母はこの日のために、新しいドレスを用意してくれた。
 赤の生地に白いレースとリボンがあしらわれたあまりに可愛らしいドレスだ。
 それを見た瞬間、複雑な気持ちになってしまった。

「私には似合わないわ」
「何をおっしゃるのですか。ミレア様だからこそお似合いなのですよ」
「……そ、そうかな」

 侍女に言われてとりあえず着てみることにした。
 鏡の前に立つと、そこには見慣れないほど可愛らしい少女が映っていた。
 自分とは思えない。けれどそれは、たしかに私だ。

 私はカイラだった頃の地味な感覚がまだ抜けきっていないようだ。
 あの頃は茶色や黒の地味なドレスばかりを着ていたせいか、こういった明るい色のドレスはなかなか慣れない。

 それでも、今なら少しだけおしゃれしてみようかなって思える。
 赤や紫やブルーのドレスだって、きっとカイラにも似合ったはず。
 もし私がカイラの友だちなら、彼女に似合うドレスを選んであげられただろう。

 そう思いながら馬車に揺られ、私は前世の実家であるアンデル伯爵家に向かった。

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