残念令嬢、今世は魔法師になる
 居心地のいい雰囲気でお茶会は始まった。
 庭園のテラステーブルには紅茶とともに、クッキーやチョコレート菓子、それにフルーツが少し添えられた皿が出された。令嬢のお茶会にしてはシンプルで、リベラは申し訳なさそうにした。

「ごめんなさい。お菓子が少なくて」

 こういうときのために、私は各自何か持ち寄ろうと事前に提案していた。

「リベラ、これはお母様が持たせてくれたの。スコーンよ。ベリージャムもあるの」

 私がスコーンの入ったバスケットを差しだすと、他の子たちも次々と持ってきたお菓子を出した。

「私は木苺のパイを持ってきたわ」
「私は人気のお店の砂糖菓子を買ってきたのよ」
「私はチョコレートケーキを焼いたの。お菓子作りが好きなのよ」

 3人からお菓子を受けとったミレアは涙ぐみながら笑顔になった。

「みんなありがとう。とても美味しそう。お礼がしたいわ」

 リベラはおもむろに立ちあがると、テーブルいっぱいに両手を広げて魔法を繰りだした。
 庭園の花が次々集まって、テーブルを綺麗に飾っていく。そしてリベラは花びらで全員分の花冠を作り、それぞれの頭上へふわっと載せた。
 私はその花冠を見て、かつて私が辺境伯に嫁ぐときにリベラがくれた花冠を思いだした。

 こんなふうに友だちとしてリベラと一緒にいられる日がくるなんて、本当に幸せで、あの過去は夢だったのではないかとたまに思うこともある。

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