残念令嬢、今世は魔法師になる

20、死の原因になった病の正体

 いつものように、放課後にノエインの授業が始まった。
 場所は訓練棟のとなりにある土の地面が広がる屋外スペースだ。

「あの、実は質問があって……」

 私がそう切りだすと、ノエインはちらりとこちらを見て短く答えた。

「ノルマをこなしてからだ」

 それもそうだと思い、私はまず彼の指導を受けることにした。

 今日の課題は、土の魔法で形になるものを創りだすこと。
 ノエインが無言で片手を軽くかかげると、地面から土が盛りあがった。
 彼の手の動きに合わせて、みるみる形を変えていく。

 やがて現れたのは、大きな狼だった。

 無機質な土のはずなのに、目つきも牙の形も生きた獣のような迫力がある。
 筋肉のうねりまで再現されていて、まるで本物の獣みたいだった。
 彼が指先を動かすと、それに合わせて土の狼は軽やかに立ちあがった。
 今度は彼が手を動かすと、土の狼はひょいっと走りだした。

「す、すごい」

 思わず声がもれたその瞬間、ノエインはぱちんと指を鳴らした。
 それと同時に狼はふっと崩れて土へ還った。

「今のが魔力値50程度でできる。やってみろ」
「ええ? そんなの無理だよ」
「やれよ」

 冷ややかな表情でさらりとそう言い放つ彼に、私は言いようのない気分にかられた。

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