残念令嬢、今世は魔法師になる
「本当にこの病気なの? 私は今まで料理に違和感はなかったわ」
「うん。きっとカイラの食事にだけ使われているんだよ」
「そんな……」
「信じられないかもしれないけど、調べてみてもいいかもしれない」
「……うん」

 リベラはやはり半信半疑という感じだ。
 ここに書かれてある症状は私が末期に体験したことであって、17歳のカイラはまだ軽症だからあまり当てはまらない。それに、これが真実だとしたら、カイラの食事に雑草が使われているということ。
 貴族の屋敷の厨房にそんなものがあるはずないし、あってはならない。

 私はその足でリベラとともにアンデル家へ向かった。
 すっかり日が落ち、夜が訪れた邸宅内では、執事が急な私の来訪に渋い顔をした。だけどリベラはそれを無視して、使用人たちに「お茶の用意は不要」と言って、私と一緒にまっすぐ厨房へ向かった。

 厨房では数人の使用人たちが手を止め、だらけた様子で談笑していた。けれど、リベラの姿に気づくと彼らは慌てて作業を再開するふりをした。
 リベラは無言で彼らを見つめると、そのまま炊事場の奥へと足を進める。
 私は野菜の入った籠を見つけ、目でリベラに合図を送った。すると彼女はこくんと静かにうなずいた。
 そしてリベラがそっと手を伸ばした瞬間、料理人が慌てて立ちはだかった。

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