残念令嬢、今世は魔法師になる
「ここは、お嬢様の来られる場所ではありませんよ」
「それを見せて」
「ただの野菜ですよ」
「それなら見てもいいでしょう?」
「いくらお嬢様でも仕事の邪魔をされては困ります」

 料理人はあきらかに焦っている。

「さあ、食事の準備を急がなければ旦那様に怒られますゆえ」

 逃げようとした料理人の前に、リベラがすっと右手をかざした。
 次の瞬間、風魔法が発動して籠の中の野菜がふわっと宙に舞いあがった。
 葉物野菜の中から次々と現れたは大量のメンベリ草だ。

 床に散らばったメンベリ草を見て、料理人は顔面蒼白になった。
 リベラはすかさず問い詰める。

「なぜ雑草が厨房にあるの?」
「そ、それは、使用人たちの賄いに使うのです」

 しらを切るつもりなのだろう。
 私はふと鍋でぐつぐつ煮立つスープに目を向けた。
 その匂いに胸の奥がざわつく。間違いない。これは、私がこれまで何度も口にしてきたあの野菜スープだ。

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