残念令嬢、今世は魔法師になる

4、単なる転生じゃなかった

 翌日、私はマリーゴールドのドレスワンピースを着て、両親と一緒に町へ出かけた。
 フェルディア王国の王都ルヴェリア。
 町ではちょうど祭りが開かれていて、華やかな音楽と笑い声であふれていた。
 飾りつけられた天幕の下では、風船を持った子供や恋人たちでにぎわい、露店の前には人だかりができている。
 私たちは少し離れたところで馬車を降り、にぎやかな声に誘われるように町の広場へ向かって歩いた。

 風に乗って漂う甘い香りに、私は引き寄せられるように足が動く。

「ミレア、あれが食べたいのかい?」

 父の言葉に私はうんうんとうなずいた。

「ようし、買ってやろう」
「もう、あなたったらミレアに甘いんだから」

 母は呆れたように笑いながらも、私と父のあとを優しく見守るようについて来た。
 その店で売っているのはハニーナッツタルトだ。小さなパイ生地の器に香ばしくローストされたナッツと蜂蜜がたっぷり詰まっている。
 ひと口かじると、焼きたての香ばしさとともに口の中でとろりと甘く溶ける。

 ああ、美味しい。幸せ!

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