残念令嬢、今世は魔法師になる
「カイラはしっかり自分の道を歩いているのね」
「本当にね。彼女は明るくなったと思うよ」

 その聞き慣れた声にとっさに振り向くと、そこには見覚えのない人物が立っていた。目深に帽子をかぶり、眼鏡をかけている。髪は長く、肩で緩くまとめられている。
 私もリベラも首を傾げていると、その人物は眼鏡を少しずらしてにっこり笑った。

「君たちにもわからないなら、他の人たちにはバレないな。変装成功」
「フェデル殿下⁉」

 私とリベラは同時に声を上げた。
 フェデルは人差し指を口もとに当てて「しぃー」と小声で言った。

「これなら堂々と話せるだろう?」

 まさか、私たちと会話するために変装したの?
 そこまでする?

 私が呆れ顔で見ているとなりで、リベラは歓喜の声を上げた。

「すごいです。完璧な変装だと思います。これならお姉様とも堂々と会えますね」
「あはは。バレちゃってる? さすが妹さん」

 リベラの発言とフェデルの反応に、私は絶句した。
 今のやりとりだと、フェデルはカイラと学校で接触するためにわざわざ変装したということになる。
 
 フェデルとカイラはいつの間にそんなに親しくなっていたの?

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